バルトラ家
バルトラ家のプロフィール
スペイン・カタルーニャ
ベガ デ リベス
Vega de Ribes
認証は1981年カタルーニャ州CCCPAE
1540年から続くワイン農家で、現当主で20代目。当主はスローフード協会員で、現地では幻となった品種「マルヴァジア」のワイン造りに情熱を注いでいる。国費留学生として、アメリカの大学で醸造学を修めた努力家。
バルトラ家の詳しい情報
【オーガニック歴】認証は1981年カタルーニャ州CCCPAE
1540年から続くワイン農家で、現当主で20代目。当主はスローフード協会員で、現地では幻となった品種「マルヴァジア」のワイン造りに情熱を注いでいる。国費留学生として、アメリカの大学で醸造学を修めた努力家。
1540年から続く名門農家、地場品種を大切に、丁寧なワイン造り
ご主人のエンリック バルトラさんは1960年生まれ。1540年から続くドメーヌの20代目です。ドメーヌの周辺にはローマ人やアラブ人が遺したいくつかの遺跡があり、中世初期にかかれた文書で12世紀にはバルトラ家のドメーヌはすでにベルナール サセーラの名前で存在していたことが証明されています。
ドメーヌはスペインでオーガニック認証が始まった直後、1981年にオーガニック転換しました(カタルーニャ州のCCCPAE認証取得)。
ア初夏の畑の様子。左からゴブレ式の株、花の咲く生き生きした畑、ドメーヌの歴史を語る古い建物
いとことの共同運営で、そもそもはいとこがオーガニックに入れ込んだのがオーガニック転換のきっかけだそう。
エンリックさんは彼に影響されて、家族の安全のため、消費者の安全のため、環境保全のためにオーガニックを始めました。
オーガニック農業を選択することで、健康に生活でき、地下水に農薬を流さず、出来る限り無駄なエネルギーを使わず二酸化炭素排出量を減らしていることを、誇りに思っています。
エンリックさんにとってのやりがいは、大昔に先祖たちが始めたものを守り続けること、環境、安全な製品、伝統的な製法を守ることに貢献できることだそうです。
そして夢は、先祖達の足跡を後世に引き継ぐこと、そして公正で持続可能な社会の維持に貢献することだそうです。素敵な方です……。
エンリックさんは、オーガニックを普及させるために横のつながりを大切にされていて、スローフード協会の会員も務めています。スローフード協会は1986年イタリアで始まった、食文化を守る運動です。エンリックさんは地場品種を大切に育てており、地元では幻となったマルヴァジア(Malvasia)のワイン造りにも力を入れています。イタリアではマルヴァジアは珍しい品種ではありませんが、カタルーニャでは、他に生産している農家は1軒のみだそうです。スローフード協会でも絶滅の危険がある品種に指定されています。
他に、マカベウ(マカブー)、ガルナッチャ、メルロー、ソーヴィニヨン ブランなど、12品種ほどを栽培しています。
とても優秀な方で、アメリカのワイン名産地、ナパ近くのUC Davis(カリフォルニア大学デイヴィス校)に、1989-1990年、国費留学してぶどう栽培とワイン醸造を学びました。せっかくならと、既に行ったことがあるフランス、イタリアとはまったく別の文化・歴史を持った国を選んだそうです。オーガニックやスローフードなど新しいことにどんどん取り組んでいくというエンリックさんの性格を表しています。
2008年現在は、ワインの研究所でも働いていて、例えばオーガニック農法で硫黄の代わりになるものはないか、土壌の状態、ぶどうの木を保護するのにどうすればいいか、発酵や酵母のことなどなどいろいろ研究しているそう。研究所自体はオーガニックに特化してはないけれど、エンリックさんは他の方数名とオーガニックの研究を進めているそうです。
ドメーヌのあるカタルーニャは、フランスのカタラン(ブーリエ家の畑があります)に接し、地中海までも僅か4km、海産物もよく食されます。乾燥した地方で、寒暖の差も大きく、ワイン造りにとても適しています。
カタルーニャ風サラダにはソーヴィニョン ブラン、カタルーニャ風パエリヤにはマルヴァジアがぴったり
この地方はとても美しく、限られた地域の中に多様な景色が見られます。特有の言語(カタルーニャ語)や文化があり、ガウディ、ダリ、ミロといった著名な芸術家もこの地の出身です。
今や世界的に有名なシェフでフェラン アドリアや東京にレストランも持っている女性シェフのカルメ ルスカイエダもこの地の出身です。
ドメーヌの景色は特徴的で、松、かし、オリーヴ、イナゴマメの森や小さな椰子の木のお陰で、一年中緑に囲まれています。
小道や壁、石積みの小屋は、ローズマリー、タイム、ウイキョウ、ラベンダーといった香りのよい植物に取り囲まれていて、散歩するのにとても気持ちがいい場所です。
ドメーヌの敷地は50ha、その内5区画に分かれるぶどう畑の広さは、30haになります。マヴィの生産者さんの中では広い畑ですが、手入れは非常に行き届いており、収穫は主に人の手で丁寧に行っています。必要に応じて、機械収穫も行います。平均収量は40hl/haです。
醸造所の設備は、ステンレスタンクなど、清潔に整備されています。「しなやかで、心地よく、畑や造った人がよく表れている」理想のワインを求め、丹念なワイン造りに励んでいます。
冬の日の畑、醸造タンク
全体のワインの85%はスペイン国内で販売しています。地元の食文化を大切にする姿勢が、支持されているのでしょう。残りの半分はアメリカへ、後の半分はその他の国へ輸出されます。
もちろん、日本へ紹介したのはマヴィが初めてです。
ちなみに、奥さまと共にコーラスグループで日本語の歌を歌ったり、日本食レストランに行ったり、日本車に乗ったりと、親日家でもあります。マヴィの日本からの訪問に、たいそう喜んで下さいました。
スタッフの訪問記【2011年1月】
畑を含む敷地内をとても丁寧に案内してくださいました。広い広い敷地。そこにはさまざまな動植物が共生しており、まさに「生物多様性の宝庫」でした。
家の入り口近くからスタートするとまずたくさんのキャロブの木が。
日本ではあまり見かけませんが、地中海近くで栽培されるマメ科の植物です。チョコレートのような風味があるためカカオやココアの代用品としても使われています。そして馬はこの植物が大好き!
バルトラさんに味見させてもらうと本当にチョコレートの味!出荷もしているそうです。このキャロブは種子は大きさや重さがほぼ均一なので、昔は重さを測るのにも使われ、いまの宝石の重さや純度を表す単位である「キャラット」の語源になったんだよとバルトラさんが教えてくれました。
さらに歩いていくと足元にはローズマリー、タイム、セイジ……ハーブも多数。お花もラベンダーほか様々なものが生えています。
アーモンドの木。花は桜にそっくりでとても美しい木です。もう実はほとんど落ちていたけれど、少しだけ残っているものを木から取って食べさせてくれました。生のアーモンドってすごくおいしい!
アーモンドの木
また、年を重ね、圧倒されるような姿のオリーヴの木が多数。中には1000年にもなるオリーヴの木もありました。
樹齢1000年のオリーブ
あるオリーヴの木にたどり着いたときには、凄すぎてみな自然と黙ってその姿に見入ってしまいました。「瞑想でもする?」と笑いながら聞くバルトラさん。まさにその木かげは瞑想室のよう。写真にも撮りましたが、この迫力の姿、霊気というか、本物の光景は100分の1も伝わりません。
この広大な敷地内ではぶどう畑もその多くの生物の中のごく一部です。
歩いていると、冬とはいえ、「生き物の生命力」を強烈に感じます。ぶどう畑も古い89歳のマカブーの樹が、まるでとぐろを巻くような迫力ある姿で、枝を伸ばしていました。
樹齢89年のマカブー
ふと、ぶどう畑で枝をとめている針金を見ると、ふわふわの綿毛のようなものがいくつも。
「これなんだと思う?」
バルトラさんが私たちに聞きます。ん~何だろう???
正解は羊の毛でした。冬の間は畑に羊を放して、雑草を食べさせているのだそうです。
しっかりと草を食べた証拠がこのように残るのだそう。そしてその残された毛を使って、鳥たちは巣をつくるのだそうです。まさに自然の中での再利用。リサイクルです。
敷地内には散歩用の馬が2頭います。耕作用ではなく散歩用??と思いましたが、バルトラさんのものすごく広大な敷地内を案内してもらったあとは、まさしく納得。歩いても気持ちよい敷地だけど、これだけ広いと馬でも良さそうです。
また、天候が悪くなったときに避難したり、休憩するための小屋もあちこちにありました。ワイナリーの畑には必ず見られるものですが、地方によって素材や形が違います。
こちらは石を積み重ねただけのものですが、強度を高めるために屋根に百合を植えてその根を石の中に伸ばしてあるものも。
見学のあとは朝食をご馳走になり、醸造所を見学したあと、さらに昼食までご用意してくださいました。
朝食ではバルトラさんが暖炉の薪でパンを焼いてくれました。
食卓には暖炉があり、パチパチと優しい音を聞きながら、こんがりと良い香りに焼き上がったパンは本当に美味しく、何て贅沢な朝ごはんだろうとしみじみ実感しました。また果実を使った奥様手造りのジャム3種(ブラックベリー、あんず、洋ナシとチョコ)も大変美味しくいただきました。
昼食は奥様お手製のパエリヤ。さらにたっぷりのムール貝のワイン蒸しも! 海の近いバルセロナだけあって、魚介がたっぷり。ワインもすすみました。
(2011年1月 野口)