ラビュゾン家
ラビュゾン家のプロフィール
フランス・ボルドー
ドメーヌ デュ ムーラン ナヴァン
Chateau de Monbazan
有史以来(認証は1963年より)
グランヴァンで有名なボルドーグラーヴ地区で1668年には既にワイン農家だったラビュゾン家。オーガニックも1963年には開始したボルドー地方の草分け的存在。当主だったポーレット引退後、息子のピエールがドメーヌを継承した。
ラビュゾン家の詳しい情報
【オーガニック歴】有史以来(認証は1963年より)
グランヴァンで有名なボルドーグラーヴ地区で1668年には既にワイン農家だったラビュゾン家。オーガニックも1963年には開始したボルドー地方の草分け的存在。当主だったポーレット引退後、息子のピエールがドメーヌを継承した。
何世紀もグラーヴでワインを造りつづけている一家
左側にポーレットおばあちゃん。右側の上から順にピエール、奥さんのベアトリス(じつはシャンパーニュのヴァンサンの妹さんです!)、ヴィクトール、ジュリー。写真には写っていませんが、ピエールさんには、他にアドリアンという息子さん、マリオンという娘さんの計4人の子どもがいます。)
グランヴァンで有名なボルドーはグラーヴ地区。ポーレットの畑はランディラスという村に位置します。このあたりは、村を少し出るととどの道沿いにもぶどう畑が広がります。ラビュゾン家は、1668年時点で既にワイン農家を営んでいた何世紀もグラーヴでワインを造りつづけている一家です。
当主のポーレットは、1926生まれ!しかし今でも日本やアメリカなど、各地を商談に回るほど、若々しさと好奇心に溢れる素敵なおばあちゃんです。パワフル、と言うと何だか恐そうですが、そのパワーが優しくシャワーのように降りかかる感じ。初めてあった人でもすぐにホッとさせくれる、チャーミングな笑顔の持ち主です。
村は同じとはいえ、家族はそれぞれバラバラに暮らしているラビュゾンファミリーですが、日曜日のお昼は全家族が集合してゆっくりと食事を楽しみます。
庭で取れたサラダにじゃがいも、そしてこれまた庭のフルーツを使ったタルト、信頼できる店から買った肉は庭にある石のオーブンで焼きます。パンは毎週マルシェに出しているオーガニックパン屋さんに1週間分をご注文。土に還るものは全て庭に戻し、紙類などは庭で燃やしてしまいます。ただ食べるものだけでなく、生活全体がオーガニックなラビュゾン家。
気候や土壌の特徴としては、大西洋気候ですが、ランド県の森(松林が中心)のお陰で、大西洋から来る風は遮られています。気温はちょっとつむじ曲がりなところもあって、やや高め。土壌は平面に位置し、畑の一部は石が多く、また一部は粘土・石灰質と砂が多い土質になっています。
土に与える養分も、海藻、岩の粉、オーガニック堆肥、緑肥といった自然由来のものばかり。そして病気などの対策についても、ボルドー液、硫黄の花、植物を煎じた液体のみに限っています。だからぶどうの木の足元は草で覆われており、クモなどもウロウロしています。生きている畑です。
スタッフは基本的にはポーレット一人だそう。先日イギリス人ジャーナリストに「いくつまでやるつもり?」と聞かれたポーレット。「神様に呼ばれるまでやるわよ!」と答えたというからさすが!また、すっかり大きくなった孫のアドリアンくんも現在畑を手伝っています。
醸造に関しては、白ワインは通常、醗酵の最初の段階で樽を使うそうです。時々バトナージュ(樽内に沈殿した澱を棒でかき混ぜる作業)しながら、2ヶ月くらい澱とともに熟成させます。その後澱引きをし、樽にそのまま置き、3月頃になったら瓶詰めします。ただし、年毎のコンディションによって樽の入れ具合を変えるそうです。このように、ワイン造りはあくまでその時のコンディションに応じて、がポーレットのモットー。
「蔵の状況、天候、ぶどうの状態・・・色々あるけれど、わたしたち醸造家は、その年、その時の条件のもと、いい年・悪い年の区別なく、ただ自分たちのできる最善を尽くすだけ」。
まさに何十年もの間、つちかってきた経験の重みと、度量の大きさを感じる言葉です。
また、人工の酵母は使いません。というのも、日本酒の蔵付き酵母のように、カーヴには天然の酵母が住み着いているから(写真上、床の上に白く見えるのが酵母のかたまり)。ポーレット曰く、「これこそが本物の命ある酵母。土とワインは酵母を通じて互いに交流し合い、循環しているの」。
こんなに経験の深いポーレットでも、やっぱり自然を相手にしていると、思いもよらないこともあるのかと聞いてみると、
「そんなの当たり前よ!何年経験があっても毎年新しいことばかりよ!」という返事。
「(2008年は)雨ばかり降って、収穫できないという人もいたけど、そんなことはない、できるのよ。雨が降るからこそ、実もなっていくんだし」
本当に人間が大きく、ちょっとやそっとでは決して動じない、おおらかなポーレット。
わたしたちもこんな風に年をとっていけたら素敵ですね。
収穫体験記【2003年】
スタッフが訪れた2003年の収獲の様子。
ラビュゾン家では、全て手摘みですから、まずはヴァンダンジャー(収獲人)と呼ばれる人がはさみと、この左の写真のかごを持って、収獲に挑みます。よく熟したものをひたすら切り続けます。朝一番は露にキラキラ光って、なんとも美しくおいしそうなぶどう。けれども夕方には精根尽き果ててしまって、ただの青い物体にしか思えなくなります(笑)
この右の写真のように、皆さんしゃがんだり、腰をかがめたり、ひざを折ったりといろいろ工夫して摘みますが、一日の終わりに体がガクガクになってしまうのは、慣れている人でもやはり同じ。ポーレットのところに収獲に来る人は、毎年ご近所の村の人。皆さんベテランさんでいらっしゃいます。
御年77歳(*2003年当時)のポーレットですが、それはもう元気、元気!!(写真上)
摘んでいてかごがいっぱいになってくると、今度はポルター(運搬人)と呼ばれる人が「はいかごかご~」とか「はい、ここに空けてね」とやってきてくれます。彼らの背中に背負っている入れ物がいっぱいになると、左の写真のように、ドメーヌまで運ぶトラックの荷台に移されます。
今回の目玉はなんと言っても、この貴腐菌(la pourriture noble)が付いたセミヨンの収獲。びっしりとカビがはえ、しっかり腐って水分が抜けているものを選びます。それにしてもすごい見た目。これを食べてみようとか、ワインにしようと思った人、ほんとに勇気あり!恐る恐る味見しましたが、えもいわれぬおいしさに大感激でした。
(おまけ)
ちなみにポーレットの家は農家民宿も行っていて、事前に予約すると宿泊が可能です。私が泊めてもらった部屋も、本当に1人でこんなに広いところを占領していいのー??というステキなお部屋でした。(左写真:これはお部屋のほんの一部に過ぎません・・・。