タリ家
タリ家のプロフィール
フランス・ラングドック
シャトー ド ブロー
Chateau de Brau ( Domaine de Brau )
1989年から
城壁都市として名高いカルカッソンヌの近郊に40haの畑を所有、オーガニック転換は1989年。地中海側でありながら、大西洋岸気候の影響も受け、南北の様々な品種の栽培が可能。受賞ワインも多数ある実力者。
タリ家の詳しい情報
【オーガニック歴】認証は1989年より
城壁都市として名高いカルカッソンヌの近郊に40haの畑を所有、オーガニック転換は1989年。地中海側でありながら、大西洋岸気候の影響も受け、南北の様々な品種の栽培が可能。受賞ワインも多数ある実力者。
「僕たちワイン農家は、一生のうち、うまくいってもたった30回-40回しかワインを造れない。だからこそ毎年、この1回に後悔がないよう、丹精を込めてワインを育てているんだ。」
ドメーヌについて
南仏ラングドック地方、オード川のほとりにある世界遺産・城塞都市カルカッソンヌ。そのお城の青い屋根がいくつも見えるところにタリ家のドメーヌ(農場兼醸造場)はあります。ピレネー山脈に程近く、美しい山並がすぐそこに見えます。
世界遺産のカルカッソンヌ
カルカッソンヌは、地理的には地中海地方に当たるのですが、大西洋岸気候の影響も受けており、南仏とボルドー両方のぶどう品種が栽培できます。ざっと挙げるだけでも、メルロー、カベルネ ソーヴィニョン、カベルネ フラン、グルナッシュ、シラー、コット、サンソー、シャルドネ、ルーサンヌ、エジオドーラ、こんなにあります!
ちなみに、土壌は石灰質で、地中深くは砂岩質です。
ドメーヌは19世紀から存在しています。名前は"Brau"(ブロー)。この地方の方言(ロクシタン)で、若い雄牛の意味です。1790年の地図を見るとこの辺りは森で、その森がなぜかブローと呼ばれていたからだそう。
そもそもの始まりは、ご主人であるガブリエルさんのお父さまが1960年代に畑を購入したこと。でも、その当時は赤のヴァン ド ターブル(テーブルワイン)だけをつくっていました。
1982年に、今のタリ夫妻(ウェニー&ガブリエル)がお父さまの畑を引き継ぎ、ワイン造りを始めます。その時に、テーブルワインではない、赤、白、ロゼを造ろうと決意しました。2人は、お父さまが育てていた元のぶどうに接木して、品種を増やしていきました。
収穫量が少ないということで先代が使用していなかった畑も、量は少なくともいいブドウが取れるのではないかと思い、グルナッシュ、カベルネソーヴィニヨン、シラー、シャルドネ、ピノノワールなどを植えたそうです。
ぶどう畑をよく見渡せる中心に住居とカーヴ(ワイン庫)も建てました。ご自宅はアーティストでもある奥さまのウェニーの絵や、素敵なオブジェがセンスよく配置されていて、とてもおしゃれで居心地がいい。
しかもお料理も上手なんだなあ。
ワインも次から次へと新しいものが出来ているし。
半分オランダ人のキュートなウェニーさん。ワインを語らせたらとても熱心。
旦那さまのガブリエルさんも1つ質問すると10分以上(!)とても熱い答えが返ってくるくらい、ブドウ作りとワイン造りに並々ならぬ情熱を持っています。本当にワインについて語らせたら、一晩でも二晩でも話し続けられそう。まさに生粋のヴィニュロン(ワイン生産者)。
畑は、少しずつ買い足して、40haになりました(そのうちワインを造れるのは35haのみ)。1990年代の終わりには、畑の周囲にある森、川などを買い足したおかげで、オーガニック畑を他の環境から守ることが出来るようになりました。
オーガニックへのこだわり
1982年当初からオーガニックに興味はありましたが、ガブリエルさん(夫)は経済、ウェニーさん(妻)は考古学を勉強していたので、すぐには取り組めず、実際にオーガニック農業に転換したのは、1989年だそうです。
自分達の環境を守るため、健康的な製品を販売するため、そして汚染されていない場所で暮らす喜びを追求するため。
このシンプルな理由でワイン造りを進めて来た夫妻ですが、世の中も同じ流れになってきて、今やオーガニックワインはフランスで確固とした地位を獲得してきています。最近も、マヴィのようにオーガニックワインのみ扱っている英国の輸入会社が、英国でもっともすばらしいインポーターの賞を受賞したり、またインターナショナルワインチャレンジでは、オーガニックのシャンパーニュが受賞したり、オーガニックワインの人気から、タリさんもそれを実感してきているとのこと。
醸造設備と収穫について
お父さまから引き継いだときはほとんど何もなく、ただのセメントタンクしかなかった設備も、畑同様、少しずつ増やしてきました。タリさんのカーヴは、タンクもぴかぴか。実に清潔で、温度調整設備も整っています。夏場の温度調節は、タンク周りに這わせた管に水を通して冷やしたり、必要な場合は冷房をつけたりします。
このモダンな設備から、タリさんのセンスがよくモダンなワインが生まれていくのだなあ。
昔はセメントタンクだけを使っていましたが、今はステンレスが主流です。化学製品を使わずに清潔にでき、洗浄が楽で、ふたの位置も調節できるからだそうです(タンク内のワイン量に応じて蓋の位置を上下できるのはとても便利)。収穫のときも瓶詰めのときも便利だそう。またセメントタンクも内側に樹脂を貼り、清潔さを保っています(掃除が楽になり、酒石酸がはりつくこともないので清潔にできるそう)。
タリさんは、本当に「実験」が大好き。実に、毎年新しいタイプのワインを造っているそう。醸造方法を変えたり、ぶどう品種を変えたり、ブレンドする割合を変えたり、熟成させる樽を変えたり…。
例えば、シャルドネは樫の他にアカシアや、樫であってもその産地をブルガリア、ブルゴーニュ、ジュピィと色々試してみる。ボジョレーのようにマセラシオン カルボニックで新酒を造ってみる。今は余り使われなくなった昔の品種を使ってみる、などなど。
いつも「こんなワインあるの?!」と彼らの試みには目が離せません。
収穫は、機械で行います。
真ん中にぶどうの木をはさむ格好で、振動で実を落としていきます(木は機械摘みが可能なように植えてあります)。うまく実だけを落とすように、品種ごとに振動の強さを変え、落ちた実は機械の後部についているタンクにたまっていく仕組みになっています。機械であれば、完全に熟したら夜でもいつでも一気に、最適時に必要な部分をすばやく収穫することができ、収穫すると決めたら30分後には醸造場に持っていけるからだそうです。
果実をできるだけ新鮮なうちに醸造することは、ワイン造りではとても大切。
タリさんによると、ボジョレーやシャンパーニュは房ごと醸造するワインなので手で収穫する必要があるけど、そういう特別なアペラシオンを除けば、全体のワインの80-90%は機械で収穫しているそうです。
そして、実際、手で収穫する必要もない。造るワインのタイプによりますが、タリさんは、「一番いい時のぶどうを短時間で収穫すること」を重視しています。
日本にいる私たちは、手で収穫したほうが丁寧でよさそうと思いがちですが、南仏の熱い太陽の下、全量を収穫するのに時間をかけられません。大勢の人を雇って一挙に収穫するには大変なコストがかかります。そうすればワインの値段も上がるし、何より収穫という重労働をしてくれる人手を確保するのも、このご時勢では難しいのです。何事にも一長一短。
目指すワインについて
このタリ夫妻が、ワイン造りで一番大切にしていることはハーモニー(調和)。
畑に囲まれ、カーヴで働く。24時間ずっとドメーヌにいる。仕事、畑、生活の垣根がなく、分断されず、ここに自分がいるというハーモニーを保つ。家族のあり方も同じ。全てのハーモニーが取れることが大切。その中で調和の取れたワイン造りをし、しかしワインの場合はそれ自体の特徴をしっかり持っていることが大切。
目指すのは、「繊細さと優雅さ、高い表現力を持つワイン」だそうです。
「理想のワインにもう近いんじゃないですか?」とガブリエルさんに聞いたところ、答えはきっぱりと、「ノン!」
「本当に毎年毎年、思いも寄らないことが起きて、今年はいい年になると思っても、醸造が全然うまくいかず、だめになることもある。毎回学ぶことばかりだよ。僕たちワイン農家は、一生のうち、うまくいってもたった30回-40回しかワインを作れない。だからこそ毎年、この一回に後悔がないよう、丹精を込めてワインを育てているんだ」
毎年毎年、本当に真剣勝負で、わたしたちに美味しいワインを届けるために努力しているタリさん。
こんなにも真心のこもったワインを、遠く離れた日本で手にしている……
このことを、受取り手であるわたしたちも決して忘れたくない、忘れてはいけないと思いました。
タリ夫妻のワインは素晴らしく、これまでも数多くの賞を獲得しています。
2020年のミレジムビオでも「シャルドネ(樽熟) 白」と「オック ヴィオニエ 白」でダブル銀賞を獲得!今後も目が離せない生産者です。
最後に、夫妻から日本の皆様へのメッセージを:
「多くの人たちがこの美しい土地をその目でみるために訪れます。皆、ここブローに来たら、また戻ってきて、すぐに友達になります。あなたにも近い内に会えますように……」(ウィニー&ガブリエル タリ)