2015年6月10日 タリ家(カルカッソンヌ)
マルセイユを出て、ツアーはラングドックへ向かいます。

タリ家のドメーヌに着いてバスを降りると、ガブリエルと奥様のウェニーが温かく迎えてくれました。
挨拶をしてぶどう畑に向かうと、強い風が吹いており皆慌てて帽子を押さえます。その姿を見たウェニーがさっそく風のことを説明してくれました。

この地域には常に地中海側からと大西洋側からのどちらかの風が吹いていて、今日は地中海側から吹いているのだそう。
2つの地域の風が吹くことによって、地中海側と太平洋側それぞれの気候の特徴が反映され、様々なぶどう品種を作ることができます。
タリ家のワインを思い浮かべると確かにシラーやグルナッシュ、カベルネソーヴィニョンやピノノワール、メルロー、シャルドネと多種多様。

強い風が吹くことのメリットとデメリットを聞いてみると「デメリットは風が強すぎると芽吹いたばかりの柔らかい葉がいたんでしまうかもしれないこと、メリットは気候の特徴が混ざることで様々な品種にチャレンジできること、病気の原因になる湿気を吹き飛ばしてくれること、あとは夏の暑い時期は作業する人が楽なことかしら(笑)メリットの方がとても大きいわ」とウェニーさん。
タリ家ではラングドックのAOCであるカバルデスを造っています。
カバルデス用のぶどうを植える畑を教えてもらいましたが、そのうちの1/3はシャルドネなどのAOCとは異なるぶどうを植えています。

AOCのカバルデスをたくさん造るほうが効率が良いのですが、量を造るよりもよりクオリティの高いワインを生み出したいタリさんたちは、あえてカバルデス用の畑にそれ以外の品種を植え、より低価格のヴァンドペイとして出荷しているのです。

畑は3つの区画に分かれており、両側2つがカバルデス用のぶどう畑、真ん中の1つがヴァンドペイ用のぶどう畑だと説明されましたが、すぐ隣同士の畑はほとんど見分けがつきません。何が違うのか聞いてみると、地層によって深く耕せる場所とそうでない場所があるのだそう。 浅くしか耕せないという場所と同じ地層だという場所の土を払ってみると、すぐに固い岩盤が顔を出します。

こんなところで植物が育つの?と思いますが、「大丈夫よ」とウェニー。ぶどうは岩盤の隙間に細い根を張れるので、ちゃんと固い岩の下にある土から水を吸収できるのです。
畑のすぐそばに花や、かたつむりなどの動植物が溢れていました。


次はワインの醸造所へ向かいました。全体像を撮りそびれてしまったので、2枚目の写真は以前訪問したときのものです。


歴史を感じる建物の中に入ると、ぴかぴかの最新機材が並んでいます。 元々はガブリエルのお父さんから引き継いだドメーヌで、先代は育てるぶどうはヴァンドペイのみ、醸造もセメントのタンクのみ、バルクで売るような安いワインを作っていたのだそうです。 それをガブリエルの代になってから兄弟と協力して少しずつぶどうの種類や醸造の機材を増やしていきました。

せっかく醸造所へきたのだからワインの製法も気になります。
ワインはどのタイミングでどんなふうに醸造したりブレンドされたりするんでしょうか。
質問してみると、ウェニーから返ってきたのはこんな答え。
「実はどのタイミングでワインを樽に入れるか、ブレンドするかはあまり大きな問題ではなくて、タンクや樽ごとの様子を見てベストなタイミングで混ぜたり熟成させたりするの。だってぶどうの出来は毎年違うし、気温も気候も毎日違うでしょう」
大体のレシピや配合はあるものの、これといった正解はなく、常に最善の方法を模索し続けているとのこと。 天候や発酵の仕組みといった自然と妙と向き合うオーガニックでのワイン造りについて、改めて考えさせられます。
この樽には人気のシャルドネ(樽熟)が詰まっているそう。

ガブリエルとウェニーは、元々法学と考古学を学んでおりぶどうの栽培やワインの醸造とは畑違いの出身です。 「でもそれが良かったの」と、ウェニーは言います。
「元々ワイン農家だったらきっと昔のやり方のままワインを造っていた。でも私たちはやり方を何も知らないから、たくさん調べてたくさん考えて、たくさんのワイン農家を訪ねてまわったのよ」
勉強熱心なガブリエルとウェニーの、ワイン造りへの情熱を感じる言葉でした。
オーガニックワイン造りをしていて一番嬉しいことは?と聞いてみると、ウェニーは「実はガブリエルと私ではちょっと違うの」と笑って答えてくれます。
「ガブリエルは良いワインを造るために技術や製法を工夫することが楽しくて、私はこうしてワインについて説明して知ってもらうことが好きなのよ」
今までのワイン造りの説明もとってもわかりやすくて、ウェニーが優しい先生のように感じていた理由がわかった気がします。
うーん、それにしてもワインの説明を聞いていたらやっぱりワインが飲みたくなってきてしまいます。
今度は自宅へ向かい、お待ちかねのランチタイムです!と、ここでマヴィのワインセレクトのパートナーボワソーさんも合流しました。
デザイナーもしているというガブリエル、内装やインテリアもセンスいっぱいでとても居心地の良い空間です。
キッチンに案内されると、そこにはマヴィで取り扱ったことのあるワインが全種類並んでおり歓声が上がります。 奥にはウェニー手作りのお料理が所狭しと並んでいます。

メニューはパプリカやなすのグリル、生野菜のサラダ、ライスサラダ、マカロニサラダ、メインのお肉はローストチキンとラム、生ハムにサラミにレバーのパテ、デザートコーナーにはアプリコットとすいか、ネクタリンとチーズも数種類。どれも食べたいけど、食べきれるかわからないほど!



欲張ったらこんなことに。(ピントがお料理から外れてしまいました…)向かいのボワソーさんも楽しそう。


食事がひと段落すると、見晴らしの良い芝生に寝転がってみたり、庭のさくらんぼを摘ませてもらったり…。

室内に戻ると、手作りのラベンダークッキーやコーヒーまで用意されていました。記念撮影のときも皆それぞれお気に入りのタリさんのワインボトルを抱えたり、グラスを持ってみたり、この数時間で皆タリさんたちのことが大好きになってしまいました。 名残惜しくタリさんたちとお別れです。
タリ家からバスで十数分ほど行くと、観光地としても人気が高いカルカッソンヌの街があります。そこで世界遺産の城塞都市シテを駆け足気味(なぜなら予定より1時間以上も長くタリさんの家で過ごしてしまったから…)に観光。狭く入り組んだ道にお土産屋さんやお菓子屋さん、カフェなどが並んでいました。


夕食は希望者を募って、カルカッソンヌの郷土料理カスレが食べられるレストランへ。チキンと豆がじっくり煮込まれて優しい味わいでした。

食後もまだまだ元気なメンバーはライトアップされた夜の城壁も楽しみましたよ!本当に盛りだくさんの1日でした。

翌日はベリュウ家とブーリエ家の2軒を訪問します。