ムザラーニョ家
ムザラーニョ家のプロフィール
イタリア・ヴェネト
テッラ ムーザ
Terra Musa
1999年以降
大地とぶどうへの熱い愛、品質への頑ななまでのこだわりが導いた結論がオーガニック。マヴィと同じく「オーガニックはライフスタイル」と言い切るヴェネトの雄が造るワインは優しく日本食を引き立てる。
ムザラーニョ家の詳しい情報
【オーガニック歴】認証は1999年より
大地とぶどうへの熱い愛、品質への頑ななまでのこだわりが導いた結論がオーガニック。マヴィと同じく「オーガニックはライフスタイル」と言い切るヴェネトの雄が造るワインは優しく日本食を引き立てる。
エリア
ムザラーニョ家のあるPramaggiore(プラマッジョーレ)はヴェネト州東部の小さな集落で、環境に配慮した本物のヴェネツィアワインを生み出す中心のエリアです。1986年にはこの村のワイン生産地を横切る“Lison-Pramaggiore” DOCワイン街道が開通しました。ヴェネツィア共和国時代の元首(ドージェ)の名前のついたドージェ ワイン街道も有名です。ドージェ ワイン街道は、ヴェネト東部とフリウリ西部地方の様々な都市・町・ぶどう畑などのワインと文化に触れることのできる他に例を見ない街道で、古代のローマの主要道路がこの地域を通っており、ローマ時代の住居であるDomusや公衆浴場、市の外壁、また初期のキリスト教の大聖堂などを目にすることができます。特にPortogruaroの歴史的な町の中心部は、この時代までタイムスリップするかのようです。ワイン街道沿いには、「聖マルコのライオン」の印がついたチェックポイントが無数にあります。これらはConsorzio Tutela協会のメンバーに属しているワイン企業で、そこでワインを購入することができます。また、Botteghe del Vinoはレストラン、タベルナ(居酒屋)、バー、公共施設等“Lison-Pramaggiore” DOCのワインを味わうことができます。
土地と畑
"Lison-Pramaggiore" DOCという、多くの高品質のぶどう品種に最適で、ワイン造りの情熱と文化が大古の昔から存在してきた土地でワインを造っています。氷河の解けた水によって下流に運ばれた沖積堆積物をからできた土壌が特徴です。これは特に第三氷河期(ヴュルム期と呼ばれる)に起きました。
過去の洪水と何度も起きているTagliamento川の流れの変化により、ごくわずかな量の石灰質の泥が堆積され、ぶどう畑の大半を特徴付ける形となっています。少し深いところになると、炭素塩の集積する層も見られます。このカルシウムが豊富な土壌により、複雑な香りを持つ素晴らしい品質のワインが生まれます。
畑の広さ:30ヘクタール
ムザラーニョ家にはたくさんの動物がいます
オーガニック
1999年、モレノさんは日本で言えば「特別栽培」に値するような基準に従う技術の採用から始めました。今は、厳しい規定のあるオーガニック農業に切り替えています。イタリアのワイン用ぶどうのオーガニック栽培については、ICEA(イタリアの認証機関:Istituto per la Certificazione Etico e Ambientale倫理と環境認証のための研究所)によって厳しく管理、認証されています。
また、継続的に醸造中の温度を監視できる定温管理システムや、コンピュータ制御されたステンレスタンクへの空気を取り除き、酸化を防ぐフィルタープレスなど、最新の技術を使用し、自然環境への配慮を完璧にした大地への働きかけを最重点課題として、農業研究の専門家と協働して慎重にぶどう品種の選択も研究しています。
- 肥料は堆肥
- 農薬の代わりに硫黄や銅を使用
sylvoz法…支柱に加えて針金を1本張って新梢を支える方法で、1.6m~と高い位置に針金を張り、5~8芽の長梢を残して積極的に下方向に垂らす仕立て方
収穫と醸造
- 地質:粘土シルト質(沈泥)、わずかにアルカリ性
- フィルター:使用
- 清澄:行なわない
- 熟成方法:ステンレスタンクとセメントタンク
- 収穫方法:手摘み・機械摘み両方(※ぶどうによる)
造り手・モレノさんのコメント
「自分が育てる自然なぶどうから、良いワインを造ることが喜びです。畑を歩きながら、人々がおいしいオーガニックワインを飲めるのだと実感できます。大変なことはたくさんあります。まずは天候。いったんオーガニック生産者になれば、大変なことだらけです。化学物質でぶどうを守ることはできないから、手作業も多く、コストも大きいです。でも私は、私は収穫のたびにいつも、よりよいものを生み出したいと挑戦しています。理想のワインは、私にも誰にとっても気に入られるもの、そしてただ自然のシステムによってのみ造られたもので、ぶどうの味を感じられるものです。オーガニック農業はライフスタイルの1つ。これが全ての人にとっての未来の形であれば良いと思っています。なぜなら私たちは地球に対しても、自分たち自身に対しても尊重する必要があるからです。私はオーガニックワインを造るという選択をしたことを非常に誇りに思っています。そして毎日とても満足しています。皆さんが私たちの造った1杯のワインを飲まれるとき、私が私のぶどうたちへ注いでいるすべての愛が皆さんに伝わればと願っています。」
※イタリアでは、過去3年間、毎年25%増でオーガニックワインが増えており、モレノさんは人々が自分自身にとってより美味しくてよいものを求めている証拠だと感じているそうです。
大地とぶどうへの情熱から、家族経営のワイナリーで働きはじめたモレノさん。趣味は、ワインを造ること、馬、ただ家族だけで船の上でバカンスを過ごすこと。夢は、もっと自然と自分たち自身に敬意を払う世界で暮らすこと。
生産者訪問記(2012年1月)
イタリアの北、かの有名なヴェネツィアがある州ヴェネトにテッラムーサはあります。ここヴェネトはイタリア全体の約5分の1ものワインを作っている産地。マヴィ代表田村もヨーロッパ在住時からここヴェネトのワインが大好きだったそうです。
訪問にはご夫婦と男の子3人の家族で迎えてくれました。畑に立っていてもいかにも「イタリア男」という感じが渋いご主人に、笑顔がキュートな奥様、見た目はイマドキの男の子ウンベルト君14歳の一家です。
まずは畑の見学に。
ソーヴィニョンブランの樹。枝を下にくくりつけてあります。ソーヴィニョンブランは他のぶどうに比べても実が大きいため、枝間のスペースが必要で、しかも上へくくると重さに負けてしまうとのこと。ちなみに枝の止め具も生分解性で土に戻るものを使っています。それが発売されるまでは切った枝で止めていたそう。
植えたばかりのプロセッコ。寒さに負けないようにロウが塗ってあります。そのロウは自然に取れるのだそうです。
また、レフォスコの樹は葉がとても生い茂るため枝は1本だけ残す、そうしないと葉ばかり出て実がちゃんとつかない、カベルネフランも同じように葉が茂り・・・などなど、とても丁寧にそれぞれのぶどうについて説明をしてくださり、その話ぶりからもご主人の研究熱心な様子が伺えます。
歩きながら、オーガニックに転換したいきさつをお聞きしました。
「この辺りは湿気が多くてオーガニックでワインを造るのが難しい土地なので、実践している農家はとても少ない。他に3~4軒あるかないか。自分たちも始めて3~4年はすごく大変だった。毎日毎日ずっと長時間畑に出ていた。でもそうやって造ったワインをお客さんに飲んでもらったら反応が良くて、『美味しい』『体調が良い』と言ってくれる。自分たちも実際にワインの仕上がりの違いを感じるし、大変だけどもう慣行農業には戻れない」とおっしゃっていました。
ちなみに収量はこの辺りの慣行農業に比べると約55%~60%も少ないそうです。
畑にはたくさんの動物たちもいます。このワイナリーを立ち上げたお父さんが動物が大好きだったからだそう。馬に、ヤギやロバもいます。ロバの名前はウンベルティーノ。意味は「小さなウンベルト」。糞は堆肥として使っています。
すぐそばに川が流れていました。そのおかげで外部とは遮断されているそう。
畑のあとには醸造所を見学しました。どこを歩いても、どこを見ても、とってもピカピカで本当に清潔。あのクリアでクリーンな味わいが、ここから生まれているのだということが良くわかります。
建物内は冷却装置があり、コンピューターで全て温度管理をしています。夏は40℃にもなるので大切なのだそう。
最新のプレス機
プレス機は、中に一切空気を入れずにできるので酸化を一切しないそう。また皮をうまく外して実から果汁を絞ることができ、そして1回入れるとなんと4時間もかけて、ゆっくりゆっくり、優しく絞るのだそうです。
醗酵タンクがずらりと並んだ部屋。醗酵状態によって温度やかき混ぜがきちんと管理できるタンクです。クオリティの高いワインを造るためには欠かせないとのこと。
タンクはステンレスのほかに、ホウロウのものが。「ホウロウは何だか昔に戻るようだけど、でも酸化の心配もないし良いのよ」 と奥様がおっしゃっていました。冷却庫で冷やした水をタンク内のチューブに流して冷やします。
1時間で1800本できるボトリングマシーンもありました。必要なときにはすぐに仕上げることができるからストックとして置いておかなくても良いので便利なのだそう。
このワイナリーは清潔なことの他に、必要なマシンがしっかりと充実していることもとても印象的でした。
そして醸造所の見学ですっかり冷えきった私たちに、息子のウンベルト君が自ら美味しいコーヒーを入れてくれました。
冒頭で「見た目はイマドキの男の子」と書きましたが、土曜にも関わらずニコニコとずっと見学に付き添ってくれた彼。14歳ですから遊びたい盛りのはずなのに。きっとこうして世界中から来る私たちのようなお客様に、信念を持って造ったオーガニックワインを熱心に説明するお父さんの姿を見ながら、何か感じることがあるのかもしれません。そのお父さんの姿が、次の世代のウンベルト君に引き継がれていくのかな、そうなると良いな、と思いながら2人の姿を見ていました。
左:醸造所で説明を受ける田村、右:数々の受賞
レポート:2012年1月(野口)