店主田村安のスパークリングワイン講座
スパークリングワインって何?
わかるような、わからないような……。
そんなあなたに、マヴィ店主田村安が、マヴィで扱っているものを中心に、スパークリングワインについて簡単にご説明します!
目次
1.スパークリングワインの起源~メトド アンセストラル(古代製法)
スパークリングワインとは、炭酸水やビールのように気泡が入っている、つまり発泡性のあるワインのこと。
シャンパーニュ=スパークリングと思っている人が多いくらい、シャンパーニュが有名ですが、シャンパーニュは数あるスパークリングワインの1つの種類なのです。まずは、「元祖」スパークリングワインについてご説明しましょう。
1-1. 起源
16世紀初め(少なくとも1530年頃商業生産されていた)に、南仏のナルボンヌとトゥールーズを結ぶ線上にある町、リムーで発泡性のある白ワインが誕生。
当時甘みは貴族にのみ許された贅沢でした。甘口ワインを造ろうとしたものが瓶詰め後に再醗酵して、結果的にスパークリングワインが出来たのではないか?と店主田村は考えています。そのため、本来のスパークリングは甘口のものだったのです。
1-2. 白ワインの醸造
糖分は、酵母によってアルコールとなり、残った糖分がワインの甘さになります。
ぶどう
↓
搾り果汁とする
↓
醗酵
↓
熟成
↓
瓶詰め
1-3. メトド アンセストラル(古代製法)
イスラム世界の影響を受けたリムーは、中世では文化的に進んだ町であり、リムーの修道院でスパークリングワイン、メトド アンセストラル(古代製法)が誕生しました。醗酵するところまでは白ワインと同じなのですが…。
ぶどう
↓
搾り果汁とする
↓
一次醗酵
↓
フィルター
↓
酵母の多くが取り除かれ、1次発酵が止まる。糖分は多く残っている
↓
一冬寝かせる
↓
酵母の増加
↓
春に近づくと温度が上がり、酵母が活性化
↓
瓶詰め
↓
二次醗酵
↓
熟成
↓
動瓶/澱集め
↓
澱抜き
↓
打栓
この次に説明するシャンパーニュと異なり、何も加えることなく、果実が持つ糖分だけで、瓶内二次醗酵が始まります。瓶の中で二次醗酵すると、酵母の活動によって発生する二酸化炭素がワインの中に残り、スパークリングワインになるのです。
詳しくはベリュウ家の紹介ページをご覧ください。
この製法は生産性が悪いため、現在では生産量が非常に少なくなってしまいました。
1-4. ベリュウ家の特徴
マヴィの古代製法スパークリングをつくるベリュウ家の特徴をご紹介します。
ベリュウ家では、ジャン クロードさんが一人で全てしているので、動瓶は道具を使って一人で回転できるように工夫
醗酵タンクは小さいもの。
保冷タンクは、同じものの周りに保冷材を張った手づくり。
セパージュ(ぶどう品種)のモーザックは別名ブランケット。春先には、葉の裏に細かい白い毛がびっしりと生え、毛布(ブランケット)のようだから。
2.シャンパーニュ
シャンパーニュ=スパークリングワインと思っている人が多いくいるくらい、有名でブランドイメージがあるワイン。リムーに遅れることおよそ130年~170年、17世紀後半~末に、フランス北部のシャンパーニュ地方に誕生しました。
2-1. 概要
シャンパーニュとは、フランスのシャンパーニュ地方で、詳細まで定められた規定に従ってつくられるスパークリングワインのみが名乗れる呼称です。
2-1-1. 数字
- 畑面積:約3万4千ヘクタール
*フランスでは全体的にぶどう畑は減る傾向にあるけれども、シャンパーニュは伸びています。 - 生産者数(ぶどう栽培農家数):約1万5千軒
- アルコール度数:11%以上
2-1-2. ぶどう品種
- ピノ ムニエ:赤ぶどうで、フルーティなアロマに影響
- ピノ ノワール:赤ぶどうで、ワインの力強さやボディに影響
- シャルドネ:白ぶどうで、上品さと繊細さをもたらす
2-1-3. 重要な地区
各品種の適応性に応じて、5地区が分散していますが、クリュが集中する特に重要な3地区があります。
- モンターニュ ド ランス…ランスからエペルネ*の間、主にピノ ノワール
- ヴァレ ド ラ マルヌ…マルヌ川流域、ピノ ノワールとピノ ムニエ
→マヴィのヴァンサン ブリヤールはヴァレ ド ラ マルヌ - コート デ ブラン…エペルネの南、シャルドネ
* シャンパーニュの中心都市
2-1-4. スパークリングのタイプと味わい
タイプ | 味わい |
---|---|
Extra Brut(エクストラ ブリュット) | 極辛口 |
Brut(ブリュット) | 辛口 |
Extra dry(エクストラ ドライ) | やや辛口 |
Demi-Sec(ドゥミ セック) | やや甘口 |
Sec(セック) | 甘口 |
Doux(ドゥー) | 極甘口 |
本来のスパークリングワインはドゥーないしドゥミ セックでした。糖分を添加するシャンパーニュ製法によって、それ以外の味わいも造られるようになったのです。そのため、言葉としては辛口を意味するセック(sec)が、「甘口よりも辛口に近い位置づけの味わい」となり、やや甘口を意味するのです。
2-2. シャンパーニュ製法
伝統的製法とも呼ばれます。
ぶどう
↓
搾り果汁とする
↓
一次醗酵
↓
糖分/酵母の添加
↓
瓶詰め
↓
二次醗酵
↓
熟成
↓
動瓶/澱集め
↓
澱抜き
↓
リキュール*添加
↓
打栓
* 「門出のリキュール」(liqueur d'expédition)と呼ばれる。このリキュールの糖分により、シャンパーニュの極甘口から極辛口までの味ワインが決まります。
タイプ | 味わい |
---|---|
メトド アンセストラル | 一次醗酵中、フィルタにかけて醗酵を止める |
シャンパーニュ | 一次醗酵が止まってから糖分を添加 |
シャンパーニュ製法の特徴
- 二次醗酵を促すための加糖、酵母添加、味の調整となる「門出のリキュール」添加により、原料ぶどうの質に関係なく、毎年ほぼ安定した品質で生産きるため、ぶどうの質が悪くても生産できる
- 通常、数年分のワインをブレンドしてつくられる(単一年の「ミレジム」、「ヴィンテージ」は、よほどの良年でなければつくられない)
- シャンパーニュ ロゼは、フランスのロゼの中で唯一白ワインと赤ワインのブレンドによる製造が可能(通常ロゼワインは、赤ワインをつくる過程で、赤ワインよりも色や渋みを抽出する時間を短くすることによってつくられる)
2-3. 気候
シャンパーニュ地方はパリよりやや北に位置しています。
年間の平均気温は10.4℃と。9.6℃以下では熟さないぶどうにとっては低いもの。
そのため、年によってはぶどうが熟さず、ワインにならないことも頻繁でした。糖分を添加することは、この地方のワイン生産にとって欠かせないことだったのです。そこから生まれたのがシャンパーニュ製法です。添加する糖分により、アルコール度を一定まで高め、保存性を上げました。また、香りや味の不足は、リキュール添加により補うことが出来ます。まさに、気候条件の悪さを逆手に取り覆し、美味しいスパークリングワインを生み出すことが出来たのです。
このように、安定した品質が保証されたのは、ワインという気候に左右される商品としては画期的なことだったのです。
2-4. 急速な拡大
フランス料理の大衆化の歴史と共に、贅沢品のシャンパーニュがたくさんの人から愛される食前酒となっていったのです。
- 17世紀末、ベネディクト会修道士が加糖およびリキュール添加をする、「シャンパーニュ製法」によるスパークリングワインをつくる
- 18世紀に評判になる
- 18世紀半ばフランス革命により、貴族お抱えの料理人が市民相手の料理屋を始める
- 19世紀にブルジョアに広がる
- 20世紀後半に大衆に広がる
2-5. ラベルの読み方
フランス料理の大衆化の歴史と共に、贅沢品のシャンパーニュがたくさんの人から愛される食前酒となっていったのです。
- 味わいが表示される(この例では辛口)。味をラベルに表示することは、フランスワインとしてはきわめて異例ですが、一般に広めるにはとても有効
- アペラシオンは、シャンパーニュに限ってはシンプルに"Champagne"のみを表記できる
※ 他のアペラシオンはAppellation ~Controleeの表示が必要(例、ボルドーの場合=Appellation Bordeaux Contrôlée) - 業態の表示(この例ではRM、詳細は次項)
2-6. シャンパーニュの業態
フランス料理の大衆化の歴史と共に、贅沢品のシャンパーニュがたくさんの人から愛される食前酒となっていったのです。
ラベルの表 | 意味 |
---|---|
NM | Négocian Manipulant(ネゴシアン マニピュラン)の略。シャンパーニュメーカーで、一部または全部を自社畑以外から購入して製造。シャンパーニュ生産者のほとんどがこの業態。 |
CM | Cooperative de Manipulant(コーペラティヴ ド マニピュラン)の略。生産者共同組合での製造販売。 |
RM | Récoltant Manipulant(レコルタン マニピュラン)の略。自家ぶどう栽培の製造販売。きわめて少数。 |
栽培から醸造、販売まで自家で丁寧に手がけるRMが、良質なシャンパーニュの造り手として、近年注目を集めています。
マヴィのシャンパーニュはRMです。
2-7. ブリヤール家特徴
規定に従い、全て手摘み
シャンパーニュの特徴的な水平型圧搾機。雑味や黒ぶどうの色素が出ないように静かに搾ります。(この年季が入った道具はついに壊れ、2007年からは新品に代わりました)
大きいメゾンでは何キロにも及ぶカーヴ。ブリヤール家にも小規模ながらに、地下カーヴがあります。シャンパーニュのカーヴは白亜質で、年間を通じてほぼ10℃程度に保たれていて、ここで熟成されることで、シャンパーニュ特有のきめ細かく、持続性のある気泡が生まれます。
シャンパーニュは、最低15ヶ月以上熟成させなければなりませんが、ブリヤール家では通常3年以上熟成させます。
2-8. シャンパーニュの楽しみ方
基本的にはアペリティフ(食前酒)で。イチゴにかけたり、くり抜いたメロンに注いだりすると美味しい。お祝いの乾杯と、後に続く食事の準備(体と気持ちの両方!)として楽しみ、食事には普通の白、ロゼ、赤を合わせるのが一般的。甘口のシャンパーニュは、食後またはデザートと一緒に楽しみます。
シャンパーニュをコースを通して楽しむ本場の「シャンパンディナー」では、軽いすっきりしたシャンパーニュから、だんだんコクのあるものやロゼに移っていきます。
何と言っても、華やかなお祝いの席には欠かせない飲み物です。
2-9.シャンパーニュQ&A
意外とわからないことがあるけど、今更人には聞きづらい?そんな疑問を集めました。
Q1:シャンパーニュ、シャンペン、どの呼び方が正しい?
A1:シャンパーニュはフランス語、シャンペンはその英語読みです。どちらも正しい呼び名ですが、マヴィではフランス語名のシャンパーニュで統一しています。
Q2:スパークリングワインは全てシャンパーニュ?
A2:違います。フランス北部シャンパーニュ地方で、シャンパーニュの規定に従ってつくられるスパークリングだけが、シャンパーニュを名乗れます。フランス国外はもちろん、フランス国内であっても、場所が違えばつくり方は同じでもシャンパーニュを名乗ることが出来ません。
Q3:シャンパーニュに合う料理は?乾杯の時しか飲まない?
A3:基本的には、乾杯の時や、前菜に合わせて飲みます。前菜以外にも合うお料理はありますが、シャンパーニュにも個性がありますので、ワインによって合う料理、合わない料理があります。ただし、重いお肉料理やチーズ、デザートに合わせるのは、一般的には難しいでしょう。けれども、個人が楽しむときに「合わせ/マリアージュ」で一番大切なのは、自分が美味しいと思うかどうかです。ぜひ、色々お試しいただいてご自分のベストマッチを見つけ出してください。
マヴィのシャンパーニュに合うお料理の例:アペリティフに最適。チーズ味のシュー、白カビチーズ、てんぷら、フォアグラのパテ、スモークサーモン、鶏やホタテのシャンパーニュソース、鮎・はも・秋刀魚、果物、果物のソルベ
Q4:シャンパーニュはどの位の温度で飲むのがおいしい?
A4:一般的には8~10℃といわれています。ビールケースが大体5℃くらいですから、ビールよりは温度が高い状態です。冷やしすぎてしまうと、香りが閉じてしまい、味わいを堪能できませんのでご注意ください。
Q5:シャンパーニュはなぜあんなに高い?
A5:シャンパーニュにも、下は1,000円台から上は…天に届くほどの金額と、全てのシャンパーニュが高価であるとは限りません。それでも、他のワインと比べると高いのは事実。理由はいくつかあげられます。全量手で収穫しなくてはいけない、最低熟成期間が決められているなどつくるのに時間と手間がかかる;シャンパーニュというブランド力;また世界一高価といわれる畑にかかる税金などのコストなど。その代わり、シャンパーニュでなければ得られない特有の持続性のある繊細な気泡や、香り、味わいがあります。また、お祝いの席には欠かせない飲み物であり、喜びをより格別なものにしてくれるシャンパーニュは、別格な飲み物といえるでしょう。
Q6:収穫年が明記されていないのはなぜ?
A6:シャンパーニュは、通常複数年のワインをブレンドしてつくられるためです。単年収穫のシャンパーニュには、収穫年は明記されます(ミレジムと呼ばれます)。ただし、ぶどうの出来が素晴らしい年にしかつくられず、また2割以上はブレンド用に保存しなくてはならないなど、生産量が少ないので、余り手に取る機会はありません。また、熟成期間も最低3年と、ノン ミレジム(収穫年不記載のシャンパーニュ)とはつくり方の規定も違います。
ちなみに、ブリヤール家のシャンパーニュは、ノン ミレジムであっても最低3年以上熟成させます。
Q7:シャンパーニュ専用のフルートグラスでないとダメ?
A7:いいえ。ヨーロッパでは、むしろ伝統的には平たいグラスが主流でした。ただし、細長いフルートグラスの方が収納性に優れており、現在はフルートグラスが普及ています。香りを楽しむためには平たいグラスが好ましいです。ただし、辛口のブリュットの場合、泡を堪能するためにはフルート型の細長いグラスで飲むほうが望ましいでしょう。切れ味も生きてきます。
Q8:シャンパーニュを開けた後の保管方法は?やはりすぐ飲むべき?
A8:すぐ飲んだ方が、スパークリングワインであるシャンパーニュの良さをお楽しみいただけるのは確かです。残ってしまうと、気泡が失われてしまうでしょう。でも、本当に美味しいシャンパーニュなら気泡がなくなっても独特の風味を持った白ワインとして楽しむことが出来ますし、またお料理に使うことも出来ます。ぜひ最後までご活用ください。
Q9:最近よく聞くRMって何?
A9:Récoltant Manipulant(レコルタン マニピュラン)の略で、自家で栽培したぶどうを醸造して、販売までする小規模生産者のことで、きわめて少数です。全て一貫してまで自家で丁寧に行うため、良質なシャンパーニュの造り手として、大変注目を集めています。
マヴィのシャンパーニュは全てRMです。
3.クレマン
シャンパーニュ地方以外でつくられるシャンパーニュ製法のスパークリングの1つ。
アルザス、ブルゴーニュ、ボルドー、ロワール、リムー、ジュラ、ディの7地方でつくられます。
つくり方はほぼシャンパーニュと同じなので、品質が高ければシャンパーニュという名ではなくても十分に満足できます。価格もシャンパーニュよりずっと低く、コストパフォーマンスが高いので、注目すべきスパークリングです。
とはいっても、クレマンはシャンパーニュの代品という訳ではありません。まずぶどう品種も違うので味わいも違いますし、また普段の食事で食前酒に飲むなら、シャンパーニュより味わいも軽く、より飲みやすいという長所もあります。
クレマンについては、「シャンパーニュ製法の上級スパークリング、クレマン」でもお読みいただけます。
4.簡単抜栓講座
スパークリング大好き!自宅でも楽しみたい!でも、、、開けるのはちょっと苦手という方が結構いらっしゃいます。これからお伝えするコツを覚えていただければ、そんな心配はなくなりますよ。
3-1. 開ける前の重要なポイント
- よく冷やしておくこと
飲む1時間前には冷蔵庫に、またはワインクーラーやお鍋に氷水をはった中に入れる
美味しく飲むために必要なのはもちろん、冷えが足りないとワインが噴き出しやすくなります - 揺らさないこと
揺らすと噴き出します
間違っても、走って持ち込んですぐ開けるなどはしないように!
3-2. 開け方手順と注意
- 金具をゆるめて外す時、コルクが突然飛び出て目に当たったりすることがあるので、コルクをおさえつつ慎重に
(金具を緩めた後、外さずにコルクにかぶせたままにしておくと、「手がかり」になります) - 少しずつ押し上げられるのを感じながらコルクをおさえつつ、少しずつ回す
トーション(ふきんや布)を使うと手が痛くありません - 空気を少しずつ逃がし、コルクを少しずつ少しずつ抜いていく(一気に抜かない、我慢が肝心)
ガスをスッと逃がすように開けられるとベスト
(レストランのソムリエは音をたてないように教育されていますが、ご家庭では多少ポンっといっても危険でなければ余り問題ないでしょう)
3-3. 吹きこぼれてしまったら・・・
冷えが足りなかったかも?揺らしたかも?理由は後で考えるとして、まずはあわてずに瓶を少し斜めに傾けると、吹きこぼれ量が少なくすみます
以上のコツを理解しておけば、コルクが飛んで、電球を割ったり障子をやぶったりすることはありません。どうぞ、御心配なく、ご家庭でも実践してください。