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オーガニックワイン専門店マヴィ設立以来のこと2

このページは、マヴィ店主・田村安が2008年に執筆したオーガニックワインへのこだわり、現地買い付けの際のこぼれ話、イベントのご案内などを当時のまま掲載しております。

マヴィ設立直前から、これから先の未来までを語る連載コラム。かなりユニークな道を歩んできた店主とマヴィの取り組みや想いが綴られています。

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EUから日本へ

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一方、この機会に乗じて外国からのオーガニック農産物や食品の輸入を止めようとした動きがありました。これが前述の有機団体役員たちや、同調する農水省の役人たちだったのです。認証制度というのはいわばグローバルスタンダードの導入ですから、先進のEU側は甘く見ていたようです。外交交渉で「EUのオーガニック認証制度は、日本が導入する制度と同等である」と合意していたのですが、実際の実施に際してはEUの認証機関がオーガニックと認めたものであっても、日本側の認証機関が検査して認めなければオーガニック認証はできないと突っぱねてきました。ここで使われた言葉は「制度は同等であるが、それでは不十分で、同一でなければならない」という訳のわからないローカルルールだったのです。社会が違えば、どんな解釈も同一ではありません。そこで同等を認め合うというのが外交上のグローバルルールなのです。EU加盟各国間でも社会構造が異なるため、完全な一致ということはありません。それでも国際間の取り決めに従って処理しています。違う社会を繋ぐのが外交プロトコールなので、この場合日本の農水省の対応は明白に国際信義則違反でしょう。ちょうど有機JAS認証制度開始の2ヶ月前にEUの通商委員(大臣)の日本訪問があり、私は関係各国大使館にこの機会を利用すべしと提言、根回しをして、閣僚交渉の場でこの件にEUが遺憾の意を示し、日本の農相はすぐ善処すると言わざるを得なくなったという経緯もありました。

一般農産物は農水省管轄のJAS認証の対象ですが、面白いことにワインなどの酒類は国税庁の管轄です。つまり役所の縄張りが違うのです。私はEUOFA代表理事として、農水省との折衝でローカルルールの厚い壁とぶつかっていたのですが、国税庁とはすんなりと折り合いがつきました。国税庁の見解は明快。国際的な制度同等性が合意されている以上、EUの認証団体のオーガニック認証はそのまま認める、というものです。これは役所間の文化の違いを表しているものでしょう。国内の農地とか農産物を扱う農水省と、世界を飛び回る国境の無いお金を扱う財務省では世界観、外交観の重みが全く違うのだということを実感しました。幸いにもマヴィはオーガニックワイン専門ですからこの騒動に巻き込まれずにすみました。

最終的に農水省も折れて日本に輸入する際に輸入業者はJAS制度に登録をしなければならないが、生産の検査自体はEUでの認証を信用して日本の認証機関の検査は省略することになりました。ただしEU各国が国としてその認証書の正当性を保証するという条件を付けられましたが、農水省は書式さえ提示しません。そこでEUOFAで農水省とEU各国大使館の間に入って調整、書式ひながたをまとめて公開しました。すると今度はEU側での各国毎に対応が異なる事態を引き起こしました。イタリア大使館は即刻書式を発行してすんなり輸入ができるようになり、ドイツ大使館は本国に紹介した結果、連邦の大使館にはその証明書式を発行する権限はなく、各州政府になるということで、それぞれの州ごとに対応が変わってくるなど、対応に数ヶ月かかり、ドイツ産オーガニック食品はその間輸入できなくなってしまいました。まさに国ごとの文化社会背景の違いをはっきり炙り出しました。イタリアがオーガニック農産物のほとんどを輸出しているのに、ドイツは最大のオーガニック消費国で完全な輸入超過。イタリアの役所は農林政策省であるのにドイツは農業・消費者保護省であるということもその姿勢を現していて興味深く感じます。

各国大使館と緊密に連絡を取って動いていたこともあり、EUOFAの講演会のたびにEU各国大使館からは外交官が出席してくれましたし、2002年1月のフランス出張の際にはドイツ大使館より農業イベントのグリューネンボッヘ(緑の週間)へ招待されて、ベルリンとボンの農業・消費者保護省を訪問しました。オーガニックを担当する課長級との面談でドイツのオーガニック政策のバックグラウンドと今後の方向性を知ることができたのは大きな収穫でしたし、また緑の党から初めて農業消費者保護大臣となったキュナスト女史がグリューネンボッヘの会場で行った、オーガニック農地率を5%から10%へ5年間で倍増させるという、初めて数値目標を示した歴史的なスピーチをその場で聴いた感動が忘れられません。

その後ヨーロッパ最大のオーガニック認証機関ECOCERTの国際認証担当のクラッツ部長を訪ね、北ドイツの自宅に泊めてもらい真夜中まで語り合い、ブリュッセルのEU本部食料総局にイギリス人のゴーエン オーガニック専門官を訪ね、EUがなぜオーガニック農業を必要とするかをインタビューし、パリの農水省でヴィダル課長や補佐官たちと話し合い、たくさんの資料を提供してもらいました。またスペインのアンダルシア州政府より招待され、オーガニック農業委員会のカセロ委員長と数日間行動を共にし、コルドバではオーガニック食品生産者を集めて講演をしたり、農業大臣にもお目にかかりインタビューもさせてもらいました。彼は率直な言葉で「オーガニック農業は過疎化した人口の再定着化政策」と言い切りました。

この2002年のヨーロッパ出張で、たくさんのオーガニックに関わる指導者や行政官や実務者に会って話を聞きまくった中ではっきりわかったことがあります。それは、オーガニックは単に農薬や化学肥料を使わない農法などではなく、個々人の生き方=ライフスタイルなのだということです。「健康な生活を守ることと住み続けられる環境を守ることを両立させましょう」ということを念頭に置き、自分にできることを実践していこうというライフスタイルだったのです。それがヨーロッパでは1980年代に成立したことこそが、その後世界をリードするオーガニック文化を生み出したのだとはっきりと理解できたのです。

ヨーロッパでも国が関与する前の1970年代まで、オーガニックはヒッピーの思想であり、反政府運動や宗教活動に密接な関係を持っていました。しかし国が認証し、助成金を支出するためにはまずかったのです。そこで「オーガニックはライフスタイル」と置くことで、一般の人たちがすんなりと一緒に実践できるようになったのです。

その後のEUOFAはヨーロッパの認証制度や個々の商品を研究するのではなく、オーガニックがどうやってヨーロッパで育ってきたのか、またEUは政策として何を求め、どんなメリットがあるのかを研究するように性格を変えて行きました。その根幹が実はRural Development Program(地方発展政策)であることが明らかになってきたからです。オーガニックというライフスタイルをひとりでも多くの国民に共有してもらい、自国のオーガニック農産物を高く買って支えてもらい、農業支援財政支出が増えることも支持してもらおうという目論見なのです。こうした政府レベルの取り組みがあったからヨーロッパではオーガニック農業が発展したのです。有名なイタリアのスローフード運動も補助金でオーガニック転換させたものの、農産物の国内市場がなく、ドイツ市場への依存が危険だから、何とか国内(特に富裕な北イタリア)に支持者を増やすことが目的だったのです。

帰国後、私は世界貿易の枠組みの中でのオーガニックの役割やEUの政策の中から日本でも実行可能なものの洗い出し、政策提案を作りました。しかし持って行き場がないまま悶々としていた折、創刊したばかりの朝日新聞beトップページに後藤田正純衆議院議員が紹介されたのを目にし、彼の話す農業改革政策に荒削りながら自民党とは思えない新鮮さを感じ、すぐに手紙を送ったところ、面会の機会をいただき、即意気投合して、情報交換をするようになっていきました。


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オーガニックフェスタ

2003年当時、後藤田議員は自民党食育調査会の事務局次長で法案作成と根回しを精力的にこなしていましたが、ちょうど目処が付いたところでした。また徳島という農業県選出で当然農業再生の必要性を感じておられました。まだ一足飛びにオーガニックへとは思っていなかったようですが、EUの地方発展政策(RDP)には強い興味を持っていただき、その中心となるオーガニックの意義に理解を示してくれました。RDPには国民全体、特に都市の30-40歳代がオーガニックを頂点とする環境重視型農業の有効性を知ることが大前提となります。私はその機会としてオーガニックフェスタを開催することを決め、後藤田議員に協力をお願いしました。彼は実行委員会のメンバーになることを了承してくれただけでなく、食育調査会の同僚議員を何人か紹介してくれました。これが功を奏して実績のない手作りイベントにもかかわらず、農林水産省、内閣府食品安全委員会、厚生労働省、環境省、文部科学省、北海道開発局から後援を取り付けることができました。

オーガニックフェスタではヨーロッパの街角に立つ市場のように、生産者や輸入者が机を並べて直接消費者に販売します。食品の流通は通常何段階にも分かれていて、生産者や輸入者と消費者が顔を会わすことはまずありません。都会に住む人たちが農業のことを自分たちの問題とは気付かないのはこのためです。私たちは直接会って触れ合う機会があればお互い分かり合えて問題が何かを気付くきっかけを作れるだろうと考えました。また農業を取り巻く環境問題についての展示も行います。そして専門家や国会議員によるシンポジウム!並べただけでも気が遠くなるような大掛かりなイベントですが、第1回を2004年4月と定め、準備に入りました。

幸いなことに会場は住友商事のご好意で晴海のトリトンスクエア・グランドロビーを無償で貸していただけることになったのですが、ドラマのロケに使われるほどの豪華な会場です。展示会場ではないので、床は総大理石張りで傷つけてはならないため、机を並べるところにはじゅうたんを敷かなくてはならず、水配管もないので保健所が求める水場も作れません。EUOFAは日本国内の有機農業団体からは距離を置いてきたため、出展者もなかなか集まらないために資金が足りず、事務局からは本当に中止しようという声さえでました。とにかくお金がないので運営は代理店に任せられず、全て自分たちとボランティアさんたちでやるしかありません。事務局の長谷川さんは毎晩事務所に泊り込みというボロボロの中でどうにか開催に漕ぎつけました。ボアソー先生はマヴィのオーガニックワイン生産者でボルドーのポーレット ラビュゾンさんピヴァ夫妻、シャンパーニュのブリアール夫妻、プロヴァンスのアラン ドウェルさんと4軒も引き連れて参加してくれ、他にもマヴィのコネを総動員してスペイン、ドイツからも来てもらいました。おかげでヨーロッパのオーガニックワイン関係コーナーは賑やかでとても活気のあるものとなりました。

準備不足、力不足でいろいろと空回りして、とても上出来とはいえませんでしたが、来場者や出展者には好評。北海道から出店してくれたオーガニックハーブ生産者の香遊生活さんも消費者との直接触れ合いで勇気付けられたと言ってくれて、以降毎年参加してくれていますから、まずは成功だったようです。

私にとって最も収穫だったのは、シンポジウムで内外の専門家たちが新しい情報を話してくれることと、素人のボランティアさんたちがいきいきと素晴らしい仕事をてきぱきとするのを見られたことです。これこそ次々新しいアイデアが湧き出てくる源泉なのです。


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議員勉強会

2004年のオーガニックフェスタの後、後藤田議員の事務所で雑談をしていた際、化学肥料による土壌汚染で根が張らず、耕作が続けられなくなること。それでも土地の表土を剥がし入れ替えれば回復できるということを話したとき、彼の目が突然輝いたのです。「それ一緒にやりましょう!」と。何といっても田畑は国家の基本。耕作が続けられない農地では国家の存続が危ぶまれます。そこで自民党国会議員に呼びかけ、「都市住民を取り込んだ農業再生勉強会」を作ることになったのです。化学物質で汚染された田畑土壌の浄化工事は持続可能社会へと転換するために大きな意味を持つものです。政府の財源が不足していても成し遂げなくてはなりません。それを国民全体の力で支えようというのが勉強会の趣旨です。保守の本流とは田畑を生産が続けられる形で守ることに他ならない訳であり、まさに国会議員の仕事です。多くの議員が参加して始まったこの勉強会で農水族の段本幸男参議院議員と知り合うことになりました。段本議員は全国の農村を隅々まで回り、有機農業の実態を見続けて来られ、民主党のツルネン・マルテイ議員と組んで超党派の議員立法で有機農業推進法を提案成立させた立役者です。また東大教授で農業政策の第一人者の生源寺先生にも顧問になっていただき、現実的なアドバイスをたくさんいただきました。

国会議員の勉強会というのは悠長なもので、選挙のたびに中断します。郵政選挙の際には帰って来られなかったメンバーもいましたし、新たなメンバーも加わります。段本さんと後藤田さんが中心となって数回勉強会を開催した後、福田康夫衆議院議員の勉強会と合流することになり、2006年4月に「新農業再生勉強会」に改組、福田さんを会長に迎えることとなりました。その後各方面の専門家を招いての検討会を重ね、11月には福田さんへ農地証券化の波及効果に関して報告を行いました。

しかし、2007年夏の参議院選挙での自民党大敗北で主要メンバーが議席を失って、残念ながら勉強会は休会状態になってしまいました。


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特約店会コパン ド マヴィ1

チェーンとの取引をしない。問屋との取引もしないというと、直接酒販店と取引をすることになります。別にたいしたことないように聞こえますが、これが大変!そもそも酒販店は全国に何軒あるか知りませんが、まさに玉石混交。酒販免許規制緩和時代に過去の遺物となったような酒販店が多く、どんどん廃業しています。十年後には勝ち組1-2割の店しか残らないといわれる業界です。航路図も水先案内もなしに漕ぎ出すには危険すぎます。それにそもそも独立したお店の1軒1軒どうやってマヴィのことを知らせればいいのか…と。

そもそもチェーンや問屋を通じての取引には、流通面での必然性があります。酒販店との直接取引は、よほど知名度が高い大企業で、大勢の営業マンをかかえて、全国に支店営業所でも持っているとか、地方の地酒の酒蔵で、地域の情報に精通しているというのでなければ成り立ちません。ですから、小さいワインインポーターは輸入だけを行い、国内の販売、流通は問屋やチェーンを通じてという図式になる訳です。

実は私も当初は問屋にお願いしようと考えました。日本名門酒会という組織があります。かつて地酒ブームを創ったと言っても過言ではないほどの会で、昭和50年代の大手全国ブランド全盛時代に埋もれた地方の酒造メーカーの酒を発掘しては、会員の酒販店に紹介して卸売流通したのです。かつて地酒は地元で飲まれるのが当たり前だったのですが、高度成長期に地方は過疎化して消費者がいなくなるだけでなく、都会で売れる全国ブランドがTV広告を流すので、地方の消費者も灘や伏見の有名酒を求めるようになり、地方の酒造メーカーはとても耐えられず、大手メーカーに造った酒を桶売りしたり、次々に廃業に追い込まれたりしていきました。桶売りというのは、できた酒を自分で瓶詰めせずに、タンクローリーで灘や伏見の大手メーカーに売り渡すことです。大手メーカーはあちこちの酒を混ぜ合わせ、香りや味を加えて調整(!)して瓶詰め、有名メイカーのラベルを貼り、TVコマーシャルで全国津々浦々へ送り出す訳です。

これはちょうどフランスでも大ネゴシアンがやっていることと全く同じ。ボルドーの有名大メーカーの中身はフランス国内どころか、スペインやイタリアからのワインが混ぜられていることは業界の公然の秘密です。アルコール業界は洋の東西を問わず国税局管轄のお金が尺度の世界。そもそも飲み手は蚊帳の外で、はっきり言うと騙してもいいから、たくさん支払ってもらい、業界が儲かり、可能な限りたくさんの税金搾り取れればいいという発想が支配しています。だから糖分やアルコール添加して数量を二倍三倍に増やすのも当たり前。飲むに値しない品質は香料や味付けでごまかして…となってしまったのですね。

行き過ぎると揺り戻しがあるのは当然。都会の裕福な飲み手の中に、画一の全国ブランドはつまらない!という向きが出てきたのです。この層が日本名門酒会の地酒に飛びつき、地酒ブームが起きました。日本名門酒会の会員店になるには審査があり、信用のある優良店ばかりだったこともあり、昭和60年頃から平成にかけては一世を風靡した感がありました。この日本名門酒会というのは、実は「岡永」という歴史のある中堅酒問屋が運営するボランタリーチェーンです。当時紹介してくれる方がいて、神戸の花山酒店と取引を始めていたのですが、この花山酒店の上野社長は日本名門酒会の関西地区の世話役をされていて、岡永の飯田社長にマヴィのオーガニックワインの話をされたことから、飯田社長が浜松町のマヴィ事務所に訪ねて来られて、お取引を始めることになりました。

岡永では営業スタッフを集めてオーガニックワイン勉強会をしたり、会員店の集まる大会にブース出展して試飲をしたりしましたが、全く売れません。やはり問屋から仕入れようとする酒販店はブームを待ってから動く、気概のない受身の店がほとんどだったようです。後からわかったことですが、時代を先取りする酒販店は自分で動き、これはと思った蔵元を直接訪ねて、問屋を通さずに直取引をするため、すでに名門酒会には頼っていなかったのです。これではダメだと感じて、半年で岡永との取引関係を辞退しました。


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特約店会コパン ド マヴィ2

その悩んでいる時に救いの主が現われました。
2001年、オレンジページで「心地いい暮らし」シリーズMOOKの編集長をされていた山本洋子さんと偶然に親しくなり、たびたびお目に掛かってマクロビとか玄米とか純米酒の手ほどきを受けるようになりました。私は今でも家では玄米と野菜や豆類という食事をしていますが、まったく彼女の影響です。会社設立から数年、実はかなり不健康な暮らしで、医者や整体に頻繁に通うほどの体調不良が続いていました。そこで山本さんのアドバイスで、肉や油を可能な限り抜いて、玄米と根菜や豆類中心の食生活に変えたおかげで、ワインを毎晩欠かさず飲み続けているにも関わらず、体調はすこぶるよくなり、体重も56kgに落ちて以来その水準を保っています。医食同源と言いますが、自ら体験したのは貴重なことでした。

そして彼女に「おいしい純米酒は?」と聞くと、島根に王祿という素晴らしい辛口純米酒があると紹介してくれ、池尻大橋の居酒屋「つくしの子」でぬる燗を試してみました。私はそれ以来、王祿にハマってしまい、機会ありさえすれば飲んでいるのですが、とにかく温度管理が完璧でないと王祿はとたんに劣化してしまいます。それゆえマヴィのワイン同様に問屋との取引をしておらず、滅多に飲めないのが残念なところです。そして山本さんはマヴィのワインをマクロビ食生活に合うと、とても気に入ってくれて、あちこちに紹介してくれたのですが、翌年夏に帰省される際に持ち帰り、なんと王祿酒造の石原ちあき専務に「いいワインだよ」と奨めてくれたのです。そして普段は日本酒しか飲まない石原さんもえらく気に入ってくれて、地元の特約店である松江の酒販店、槙戸天狗堂さんを紹介してくれました。早速、槙戸天狗堂の槙戸孝之社長よりお手紙をいただき、やりとりを交わして10月に松江を訪問することになりました。

愉快探訪館・酒の槙戸天狗堂と名付けられたお店はそれまでの酒販店のイメージとは全く違い明るくモダンな建物で、レジカウンターには大きな生花が見事に飾られ、立派なお店です。単なる地元の酒販店ではなく、お客さんを遠くから呼べる専門店を目指したものでした。王祿、李伯などの島根の銘酒だけでなく、久保田や田酒、飛露喜などの入手困難な日本酒が冷蔵ショーケースにずらっと並んでいます。

槙戸孝之社長は昭和22年猪歳生まれ。お話しをしていく内に素晴らしく人を惹きつける魅力のある方だとわかり、すっかり意気投合し、島根県の販売をお任せすることにしました。そして槙戸さんは全国で何軒かの有力酒販店を紹介してくれ、1軒1軒連絡をしては訪ねて特約店になってもらいました。ほとんどは地酒を大切に販売する専門店です。ワインと違い蔵元と直取引で、細かい温度管理も厳しく守ることに慣れている優良店ぞろいです。これが特約店会コパンドマヴィの始まりです。

コパン ド マヴィとはフランス語でマヴィの仲間たちという意味です。オーガニックワインという、世間ではまだ認知されていないので売りにくく、温度管理に気を使わなくてはならないやっかいな商品を扱うのは酒販店にとっても大変なことです。10度台の定温設備も必要ですし、オーガニック知識も勉強してもらわないとお客様に伝えることができません。これは一般のワインを主力とする酒販店では考えられないレベルなのです。また、オーガニックワインをお客様に伝えるということは、一般ワインがどのように造られるかを知らせてしまうことになるため、これまで販売してきた、簡単に儲けが狙える商材を殺すことになってしまいます。今でこそ食品偽装事件が相次ぎ、日本の消費者もトレーサビリティーに関心を示し始めましたが、まだまだ騙すのは簡単、そのタネをわざわざ明かしてしまうような業界人はほんの一握りの先見性を持った人たちだけです。マヴィのオーガニックワインを販売する特約店会コパンドマヴィ入会資格とは、まさにこの「一握り」の気概と能力を持っている経営者だということです。

コパンドマヴィでは全国大会を開催、オーガニックワインを取り巻く状況や、いかにお客様へお伝えすべきかなどを勉強し、他の仲間がいかに導入していったかなどの事例を交換し合ったりしています。また、毎年生産者を訪ねる研修旅行を実施して、ぶどう畑とその素晴らしい環境、醸造の様子、ワイン産み出す文化背景なども学んでいます。ただ一番大事なことは、生産者たちの生の姿に触れて彼らと直接話し合うことでしょう。そこで得られる感動こそがしっかりとお客様にお伝えする原動力になっているのです。

こうした努力は経済的には大きな投資です。問屋から仕入れてただ並べて売るだけという、受身の商売とは全く違います。単なる商売人ではなく、自ら惚れ込んだ「本物を伝える商人」であることを誇りとしていなければできません。コパンドマヴィメンバーはまだ40軒ほどで、少しずつしか増えません。流行ってきたから、単にオーガニックワインを並べてみようと思って取引依頼をされる酒販店はだいぶ増えているのですが、マヴィの特約店基準に達していないお店がほとんどなのです。書類審査、実地訪問してのお話し合いをしてみると、何も考えておられない方や、気持ちはあってもそれだけの力が備わっていない方が圧倒的に多いことにびっくりしてしまいます。やはり酒販免許制度で護送船団方式が長く続いたことで、これまで考えることはしなくても商売ができたというのが問題なのでしょう。

これは酒販店に限ったことではなく、農業も金融業も土建業も日本の内需に関わる業種はいずれも同じ問題を抱えています。物とサービスとお金の国境が崩れていく今日、アンシャンレジームが末期の悲鳴をあげているかのようです。国家の役割も変わり、横並び一線を支える仕組みはすでに破綻しています。黒船から明治維新で幕藩体制が崩壊し、「天は自ら助くる者を助く」世の中になった時、価値観が急激に変化する中で自分のアイデンティティーをいかにして発揮できるかが問われているのだと思います。


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>>>オーガニックワインについて


商品一覧:オーガニックワイン専門店マヴィ設立以来のこと2

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