新緑

BYO 飲食店にワインを持ち込もう!

BYO Clubのサイトをオープンして2ヶ月になりました。

BYO Clubサイト

3月に構想して以来準備を進めて来たのですが、次々とあれこれ関連して思い付いてしまったり、途中2回ヨーロッパへ出掛けたり、またもちろん本業(どれが?)が忙しくて、ずいぶん時間がかかってしまいました。でもそのおかげでその間に知人たちにレストランへのワイン持込みについて、どう思うかかなりたくさんヒアリングすることができました。その結果、ネガティブな反応はゼロ、というか、積極的に賛成がほとんどだったのです。つまり僕がこれまで考えついた新事業の中では、最も実現性が高いということです。

何といってもユーザー(ワインが好きな30歳以上の女性たちが中心と思いますが)にとっては、これまでレストランでのワインチョイスの自由を店側に制限されていたのが、BYOでは100%自分の自由にできるという点が手放しで嬉しいことです。

ではお店をやっている人にとってはどうかというと、案外好反応。なかには「これまでワインでかなり利益を得ていたから持込は困る」という人もいますが、「仕入なしで持ち込み料をもらったらいいでしょう」と説明すると、資金繰りを日々考えなければいけない経営者として、それもありだとすぐに気付く人が多いようです。

では飲食店と取引している酒屋さんにとってはどうかというと、業務用酒販はこの不況で壊滅的な状況で、むしろ店頭売りへとスイッチすべきと思っている経営者が大半。

メディアにとっては、海外のBYOのことは知っていたので、誰かがやってくれればいいと思っていた」とか、「よい話題の少ない飲食店業界に、新しいソリューションとして伝えたい」などと、とてもポジティブ。

つまり、もっとも押さえなければいけないマーケティングのツボは全部はまっているのです。
これはイケる。しかし今回はオーガニックのようなニッチではなく、メインストリームでの勝負なので、見せ方がとても大切。おしゃれで楽しい、その上class感がなければちゃんとアピールできない、中途半端なものではダメだと思っていたところ、たまたまADDIXの下山さんに出会いました。
ADDIXは集英社のマキアのサイトを作っています。おしゃれで楽しくclassyなメインストリーム。とてもユニークな人物で、瞬時に一緒にやれそうだと直感して、即日サイト制作を発注しました。

充分な財源も、開発に割く時間も足りずにオープンさせましたので、マヴィのWEBサーバーを利用し、ポイントシステムもマヴィの通販用を利用しています。まだできていないことが多々ありますのでお気付きの点はぜひおしらせください。できる限り改善していきたく思っています。
少しずつ改善していて、今では携帯からの検索もできるようになりました。

BYO Club携帯サイト

サイト中身のBYOできる飲食店はようやく8軒になりました。あらかじめ飲食店を説得して、オープン時点でもそれなりの数の店を入れておくべきだというのが、これまでの常識でしょう。でも僕はそう思いません。どうせゼロからのスタートです。どのような形で紹介されるかを見てもらわずに飲食店へサイト掲載をお願いするのは好ましくないと判断しました。

僕はBYO Clubという箱を作りました。BYO Clubはユーザのみなさんが自分たちで作る情報サイトです。BYOをできる店が増えることはワイン好きの幸せにつながります。これを誰かが集めて公表してくれるのを待つという受動的な姿勢ではなく、ひとりひとりが主体的にBYOできる店を発掘・説得して、飲食店の自発的な意思をもって公表させてもらうことで、1軒でも多くの飲食店に参加してもらい、多くのワイン好きが簡単においしい料理とBYOした自分が好きなワインを合わせて楽しめるようになれば、と願っています。

マスマーケティングで一方通行の情報を流し、大量生産品を大量消費した時代はもう終焉に近づいています。マスの時代は社会のキメゴトは仕方ないと諦めるしかなかったかもしれませんが、個の時代では誰でもどんな決定にも参加できます。僕はBYO発進の旗を振りましたが、この先育てるのはたくさんの個人の力だと思います。ぜひBYO Clubに積極的に参加して、情報を発信してください。


by 田村安  at 10:24  | Permalink

オーストリア訪問3

オーストリア訪問1オーストリア訪問2の続きです。

Vie Vinum2010

Vie Vinum 2010は一般のワイン展示会で、オーガニックワインに特化しているわけではなく、事前に問合わせてもオーガニックワイン生産者は数軒のリストをもらえただけだったので、実はあまり期待していませんでした。
ところが、会場で出展者ガイドを手に入れ、1軒1軒の記載情報を読み込んでみたところ、オーガニックとかビオディナミックとかの記述が結構あります。そこで片っ端からマーカーで印を付けて、生産者スタンドを訪ねて飲んでみることにしました。

その結果の印象は、下記の通り。

1.全般にキレがいいワインが多くレベルが高い。
2.価格は全体的にまあまあで、ドイツよりもコストパーフォマンスがよい。
3.ビオディナミックと名乗っているところには来客が多く、ブームの感がある。
  価格がかなり高めだが、味に深みを感じずバランスを欠いているものも多く、
  興味あるワインはあまりなかった。
4.90年代後半か2000年以降にオーガニック転換した生産者が多く、
  特にビオディナミックは2005年以降に流行となったようだ。
  転換中の生産者が多い。
5.外国で勉強や修業した経験を持つ若い生産者が結構いる。
  親と一緒に来ていても、親はドイツ語のみ、子供は英語が通じやすい。
6.小規模生産者が多いが、貴族所有の大シャトーさえもオーガニックを始めている。

1日中試飲して、話しを聞きまわり、興味深いオーガニック生産者2人に出会いました。

まずディヴァルドさん。オーガニック転換は1980年と、まだオーストリアではほとんど誰も見向きもしなかった時代からの筋金入り。
流行のビオディナミーと違ってあまり訪問者がおらず、お父さんが暇そうにしていました。
実は2002年にここのワインを飲んだことがあり、ダレた印象だったので、どうせ昔ながらのもっさりとしたワインだろうと、全く期待せずに試したところビックリ!すごいキレてる。
そこでじっくりとお父さんに話をきいてみると、2008年から当時21歳だった息子のマーチンさんに醸造を任すようになり、酒質が一変したとのこと。
マヴィのほとんどの生産者たちと同様に30年間もオーガニックをやっていると、土の生態系は完全。昨日今日転換したばかりの農家と較べれば月とスッポンほどの違いがあります。自然がもたらす力を全て受けたぶどうは力がみなぎっています。昔からのオーガニック生産者なので価格感もよく、さっそく翌日家を訪問することにしました。

オーガニックワイン生産者マントラーさん オーガニックワイン生産者ヨセフ・マントラーさん

もう一人はマントラーさん。こちらは2003年からオーガニック転換を始めて認証を取得したばかりの若葉マーク。とはいえ当主のヨセフさんは50代のベテランで、大学で農業科学を学んだ後外国で研修を積んでいます。
彼のワインはもちろん微生物汚染が全くないキレのよさなのですが、それだけではなく、オーストリア帝国の伝統に即した深いコクやまろやかさを併せ持つ真のGrand Vin(銘醸ワイン)です。いかにも剪定を徹底して収穫量を落とし凝縮させた素晴らしい味わい。
価格はかなり高めでしたが、極めて興味深い作品です。

マントラー家は16世紀から続く歴史あるワイン生産者で、またヨセフさんの奥さんは、オーストリアのビオディナミックを代表するニコライホフのサース女史と姉妹とのこと。それなのになぜビオディナミックをやらないのかと聞くと、「オーガニックは理解できるが、ビオディナミックの唱える理屈がさっぱり理解できない。私は自分でわからないことをやるつもりはない」と、きっぱり流行に乗ることを否定してくれました。
オーガニック転換の理由を聞くと、2002年の嵐と大水害で、工場的な化学農業は終焉に向かうと考え、変化する時に来たと感じたからだそうです。
信念と温かさを併せ持つ、現実的でロマンチストでもある、とても魅力的な人物です。

流行や市場に流されている生産者ではなく、ブレない生産者たち。マヴィの求める基準はこれです。

大きな収穫のあった展示会Vie Vinum 2010でした。

by 田村安  at 13:49  | Permalink

オーストリア訪問2

オーストリア訪問1の続きです。


6月にオーストリア訪問レポートを書いて以来、ずいぶんと間が空いてしまいましたが第2回です。

オーストリア・オーガニック協会(BIO Austria)理事でワイン生産者のヴェルナー・ミヒリッツ氏のインタヴューから。

ミヒリッツ氏の農場はウィーン南駅より急行列車で1時間20分ほどのパムハーゲンにあります。ここはハンガリーとの国境の町で、彼の農場は国境を越えてハンガリー側にもあります。かつては共産圏だったハンガリーも、今ではEUに入っているので、国境とは名ばかり、無人の検問所址が残ってはいるものの、まあ県境みたいなものです。

ハンガリー国境
ハンガリー国境


オーストリアには約2万軒のオーガニック農家があり、オーガニック転換中を含めて20%の農地がオーガニック化されています。そのうち1万4千軒がBIO Austriaに加盟しています。たくさんのオーガニック農家がひとつの団体に集まることで、政府に対しても提言ができ、助成金も一本化して有効に使えるのだそうです。実際BIO Austriaの年間活動予算のうち30%以上が助成金ですし、政府委託事業を含めて60%以上が政府のお金です。ロビー活動にも力を入れています。また、スーパーなど流通との取り組みの窓口が一本化されることにより、オーガニック市場での生産者の力を強めると共に、流通側からも一緒の取り組みがやり易くなって、オーガニックの発展に役立っています。

しかし、これだけたくさんの農家がオーガニック化したのはなぜでしょう。ミヒリッツ氏は、農家にオーガニックを強制するのではなく、オーガニックをやりたいという気持ちを持ってもらうことが大切だと言います。蝶が飛びバッタが跳ね、様々な花が咲き乱れるのが本来の畑の姿。この自然がたっぷりの中で働くことが、化学肥料と農薬で作られた不自然な環境の中で働くよりもずっと健康だし、気持ちいいということを農家に知らせることが大事なのです。
オーストリア政府が国家政策としてRDP(地方発展政策)を推し進める中、BIO Austria は農家とのインターフェースとしての役割を担ってきたのです。
オーガニック農業は同じ規模の一般農家に比べて収入はいくらか多くなりますが、労働力を多く必要とするので、一人当たり収入は若干少ないのが実情です。これを補うのが助成金で、つまり公共事業なのです。都会の税金を地方に投入する。これをいかにスマートに行なうか。BIO Austria の活動はそこに焦点が合っているように思えます。

ミヒリッツ氏と奥様


ミヒリッツ氏は2003年にオーガニック転換した、30代の若いオーガニックワイン生産者です。この若さがオーストリアの事情を象徴しています。

90年代、オーストリアのオーガニック農業は飛躍的に拡大しました。オーガニック農産物や製品の市場は隣国ドイツです。しかし当時オーストリアワインは国外市場ではほとんど受け入れられていなかったのです。理由は1985年の偽装ワイン事件。オーストリアのメーカーがジエチレングリコールをワインに混入させることで、糖度を高めて安物ワインを高級ワインとして売ったのです。オーストリアワインはボイコットされ、国際市場から完全に姿を消しました。そのため90年代でもオーストリアのオーガニックワインには売り先がありませんでした。事件から立ち直るために、オーストリア政府はヨーロッパで最も厳しいワイン法を制定して、どこの国でも当たり前の香料添加を禁止しました。旧世代の生産者たちは発言力を失い、息子たちは外国に留学して最新のテクノロジーを学びました。そして政府の指導が効果を発揮してステンレスタンクなどの最新醸造設備が次々に導入されたのです。
オーストリアワインは2003年から2005年ころにかけて、一変します。
父親世代が90年代にしっかりとオーガニックで土作りしたブドウ畑からは、品質の高いオーガニックブドウが獲れる様になっており、そこに最新の設備と息子世代が持ち込んだ醸造技術が合わさったのです。キレのいいワインが次々と生まれだしました。オーストリアワインのくすんだイメージは急速に払拭されつつあります。
元々ハプスブルグ王朝の都ウィーンは美食の街。舌の肥えた宮廷貴族たちによって磨かれたオーストリアワインは極めて上質なものでした。ところが化学農業と化学醸造で大衆化や偽装が起きて品質も下がり、信用を失ってしまったのです。

そのオーストリア帝国のワインを蘇らせたコンセプトが「オーガニック+ハイテク」なのです。

by 田村安  at 14:10  | Permalink

マヴィ生産者訪問ツアー(2)

ボジョレー2軒目はレニエのランポンさんを訪問。

ドアットさんのところから丘を縫うように30分ほど北に向かうと、徐々に隆起が高くなり、ブリュイの山を左に回りこんだところで、かわいらしい2本の塔を持つレニエ村の教会が見えてきます。ここで一気に丘を登り2軒目のオーガニック生産者ランポンさんの家に到着。

レニエ村の教会

ドアットさんのシャトー ド ボアフランとは異なり、なんとも小さな家ですが、南向きの斜面には素晴らしいぶどう畑が付いています。そもそもぶどうはオアシスの植物、太陽と乾燥を好み、地下水脈に達する根を張ってミネラルたっぷりの水を吸い上げて育ちます。湿った土壌では根が深く張らず、いいぶどうができません。その点ランポンさんの斜面畑は理想的な条件です。

バスが着くとランポンさんの愛犬ビアンカが尻尾を振って歓迎してくれます。
この犬はいつも独りで畑作業をするランポンさんのお供をする、いわば相棒みたいな存在。収穫の時は実っているオーガニックぶどうをムシャムシャ食べてしまうのですが、決してお隣のぶどうには手を出さない賢い犬です。(お隣りのぶどうには農薬がかかっているので…)

「今年はコクリコ(ヒナゲシ)がすごくたくさん咲いているよ」って、ランポンさんが喜しそうに畑を案内してくれます。トラクターは持っていないので、馬と人力で耕す、様々な雑草(ハーブ)の繁ったフカフカ畑は彼の一番お気に入りの場所です。一日も離れたくないから、日本には行けないけど、日本人のみんながこうしてきてくれるのがとても嬉しいって。

説明するランポンさん


奥さんの手料理ランチは醸造タンクの前に机を並べて食べます。この机は家を買ったときに最初に買ったのだというので、もう30年以上使い続けています。木製のプレスは今では博物館モノですが、現役。

天候に恵まれた2009年のレニエはとてもバランスがよく、まだ若いけれどまろやかで、さらに奥の深さを感じさせる絶妙の仕上がり。誰もがうっとりとして、「美味しい」の合唱!
ランポンさんがアコーディオンを演奏して、ヒロヨさんが踊りだすなど、楽しい時間はあっという間に過ぎて、もう4時!
帰り際にカーヴを覗いたら、2009年はもうあと400本ほどしかありません。あまりにもパリでの評判が良過ぎて、どんどん売れてしまったのですって…。

残りはわずか!

これではマヴィは例年よりもずっと少なくしか確保できません(泣)
みなさんごめんなさい。

田村安の7月のオーガニックワイン講座案内

7月は京都、東京、福岡で開催します。


フランスオーガニックワイン講座&パーティ編@京都
7月4日(日):17:00-19:30
生産者訪問旅行報告もしますので、関西の方はぜひ来てくださいね。

入門編@マヴィ赤坂本店
7月13日(火): 19:00〜20:30

入門編@マヴィ福岡店
7月30日(金):18:30〜20:00
7月31日(土):17:00〜18:30
アルザス編@マヴィ福岡店
7月30日(金):13:30〜14:30
7月31日(土):13:30〜14:30

by 田村安  at 14:19  | Permalink

マヴィ生産者訪問ツアー(1)

JTBより「マヴィオーガニックワイン生産者ツアー」を募集したところ、全国各地から12名の参加者が集まってくれたので、週末からフランスに来ています。これだけの人数だと一人では荷が重いので通訳にはヒロヨさんが入って、計14名のグループで生産者さんを訪問しています。

成田より昼の便でパリ経由リヨンに入り、翌朝は土曜日でマルシェ・ビオ(オーガニック市)開催中だったので、さっそく出かけてみました。いいお天気です。
隣にある一般のマルシェと較べると売り手がちょっと違っている感じ。商売っぽくないのです。あちこちに説明や畑の写真が出ていて、説明もしてくれます。バリトンで歌っているおじいさんや、ハープを演奏している女性もいます。
マルシェの様子

端っこにはグリーンピースがテーブルを出していて、遺伝子操作反対の署名集めをしています。僕もかわいいバッジを買って襟に着けてみました。
野菜や果物は豊富に売っています。イチゴやサクランボの旬で、いかにもおいしそうなのでつい「1kgちょうだい!」
マルシェの様子

グループのみんなも同じようで、天然酵母パンやら、蔓についたトマトやら、おいしい色のニンジンやら、肉のパテやら、Brut(辛口)のシードルやら、オーガニックワインやら、鶏の丸焼きやらをぶら下げてます。
なんと最初のランチから公園でピクニック!


二日目はボジョレー。まずはヌーヴォーでお馴染みのドアットさんを訪問。

バスの車窓から、なだらかな丘が連なる風景に広がるブドウ畑、黄金色の石造りの建物。いつ来てもボジョレーは美しい、絵になりますね〜と、見とれていたら、農薬散布が!
現実の世界は映画「未来の食卓」に描かれるままです。
ブドウの花が咲くこの季節は一番病気がつきやすい時なので、手間をかけずに収穫を欲しい農家は、どうしてもたっぷりと薬を撒いてしまいがち。
たしかにボジョレーヌーヴォーの大部分は工業的な加熱色抽出法で作られるため、どんなブドウでも単なる原料としては同じこと。しっかりと手間をかけるのがバカバカしくなるのでしょう。AOCという一見農家保護に思える、実はネゴシアン保護の制度が最もよく機能しているのが、シャンパーニュとボジョレーなのです。どちらも不人気な安ワインを世界的に注目されるブランドに変身させた、マーケティングサクセスストーリー。とにかく同じモノが大量に作れないといけないので、醸造は農家の手を離れて大資本の近代的工場に委ねられています。そんな中にも、あまのじゃく的な素晴らしい生産者がいてくれるのが救いです。

雑草がいっぱいの畑に入ると、みんなドアットさんの説明に聞き入って、熱心にノートを取っています。

畑の様子

醸造所でははしごを発酵タンクに掛けて、上から覗いて蓋付の構造を確認。ブドウを潰さずに房ごとタンクに詰め込み、自分の重みで潰れて発酵することでできるアルコールと炭酸ガスの力で色を抽出する伝統的製法には、この蓋が重要。なければ炭酸ガスは空気中に逃げてしまうので…
そしてオーガニックでも多くの生産者たちが炭酸ガスボンベを使い、発酵前にガス充填して抽出にかかる日数を半減させているのに、しっかりと伝統を守るドアットさんのところには、ボンベはありません。

醸造所の様子

その後は山羊のチーズと天然酵母パンをつまみながら2009年のマヴィオリジナルワイン(ボジョレー私家版)を試飲。
いい年だったので、素晴らしい状態に仕上がっていました。
次の船で入荷する予定、お楽しみに!


田村安の7月のオーガニックワイン講座案内

7月は京都、東京、福岡で開催します。


フランスオーガニックワイン講座&パーティ編@京都
7月4日(日):17:00-19:30
生産者訪問の様子を中心に話しますので、関西の方はぜひ来てくださいね。

入門編@マヴィ赤坂本店
7月13日(火): 19:00〜20:30

入門編@マヴィ福岡店
7月30日(金):18:30〜20:00
7月31日(土):17:00〜18:30
アルザス編@マヴィ福岡店
7月30日(金):13:30〜14:30
7月31日(土):13:30〜14:30

by 田村安  at 16:42  | Permalink

オーストリア訪問(1)

先週、ワインの見本市VieVinumのため、オーストリアの首都ウィーンに行って来ました。

オーストリアはオーガニック農地率が20%に達する、世界一オーガニック農業が盛んな国です。
国土が狭く、2/3以上が山岳地帯、国民所得が高く、ちょうど日本とよく似た条件なのに、日本のオーガニック率0.18%に較べて、なんと100倍以上も進んでいるのです。とは言っても、オーガニックの歴史は浅く、80年代まではフランスなどに較べて後発でしたが、90年代以降急速に普及し、2000年代後半からはさらに急成長を遂げて世界一になってしまいました。

数字ではわかっていても現地を見なければ理解できませんので、このチャンスに立体的な取材をと思い、ワイン見本市に加えて、オーストリア政府のオーガニック担当官のトーマス・レッヒ氏、オーストリアオーガニック協会理事のヴェルナー・ミヒリッツ氏、オーガニックワイン生産農家訪問などを詰め込みました。


かつての超大国ハプスブルグ王朝の伝統を誇り、長らく永世中立国であったオーストリアがEUに加盟したのは1995年、農業や伝統産業は一気に国際化の波にさらされることとなりました。そこでオーストリア政府は自国の産業、経済を守るためにウルトラC級の対策を迫られることになりました。それがオーガニックという考え方の普及だったのです。政府は農薬や化学肥料は土壌と水を汚染する危険な化学物質であることをはっきりと伝え、オーストリアの土や水や景観や自然環境を守るにはどうしたらいいだろうかを、国民みんなで考えよう、という動きを創り出しました。そして農業を守ることはオーストリアの自然を守ることだと、都会の人たちもわかるように持っていきました。
それまで農林省は化学肥料や農薬を使って安く大量に生産することを推進してきたので、180度の方向転換でした。

数回に分けてオーストリアオーガニックレポートをお伝えします。
初回はオーガニック農業担当官のレッヒ氏のインタビューから。

トーマス・レッヒ氏の所属は農林環境水資源省。これだけで日本に較べてオーストリアのスタンスがはっきりわかります。
環境保護、水資源保全と農業林業が同列という意識が明確になっています。

オーストリアは山国であり、農地の2/3は中山間地で、寒冷で雨が多くて生産性が低い。そのため農業だけで生計を立てることが困難で、2/3は兼業農家、1戸あたり平均農地面積は17〜20haだが、これはドナウ川流域のウィーン地方平野部の小麦畑地帯だけが広く、中山間地ではかなり狭くなる。

1980年代まではオーガニック農家はほとんどヒッピーといえる状況だったが、90年代に入り一変、急成長した。
理由は下記の通り。

1. 1995年よりEUに加盟し、国際市場に晒されることになって、その対策として政府がオーガニック農業を国内農業の保護の手段として選択したこと。

2. スーパーマーケットBILLAが1994年よりJa! Naturlichという自然を掲げたラインアップを開始して、現在600品目のオーガニック商材をリストしたこと。

3. スイスの大学が中産間地のオーガニック農業を研究してきて、その成果を導入して独自の農業技術研究を行い、政府の農業アドバイザーにオーガニック農業技術を学ばせ、これを農家に指導させたこと。

4. BIO AUSTRIA協会が会員よりの会費と政府補助金30%で、オーガニック技術情報やマーケットにつながる情報を公開して、これを農業アドバイザーが広めて、一般農家にオーガニックに関する認識が広がり、偏見を払拭して、消費者の高価でも買うというニーズと、化学肥料や農薬の購入費が不要なので、機械を導入しても長期的にはメリットがあることと、農薬の健康被害から逃れられることを伝えて、農家にオーガニックをやりたい、昔のように蝶や鳥がいる自然の中で暮らしたい、という気持ちを持たせのることに成功したこと。

5. EUのRDP予算をフルに活用して環境農業振興を行なったこと。
EUでは50%の予算補助を行なうが、50%は地元が負担しなければならないため、貧困な国では地元の支出が集まらず活用しにくいが、裕福なオーストリアでは地元負担が容易なために、EU全体で2%の面積しかない農地に対して、全体予算の9%を得ている。これには前EU農業委員だったフィシェレル氏の影響もあり、政治と官僚が効率的に取組んだ成果といえる。
現在はEUが拡大して、旧東側加盟国には75%までEUが負担するという制度もあるが、25%さえ支出できない国がほとんどであり、積極的には活用されていない。

6. オーストリア政府が掲げるRDPは次の5項目
1)伝統的非集約農業
2)自然保護
3)景観保全
4)土壌と水の保護
5)オーガニック農業

こうして2010年には転換中を含めて、農家軒数で16%、面積で20%がオーガニック化されることになった。この数字はEUでは一番である。
環境対策する農家の収入を補うために、環境農業直接支払いは6億ユーロで、その内1.5億ユーロがオーガニックに当てられていて、牧草地で250euro/ha、畑で280euro/haとなっている。オーガニックワイン農家は700euro/haの補助がある。
オーガニック農家は同じ規模で比較すると、1軒あたりの収入は慣行農家よりも多いが、労働力を外部より雇用せざるを得ないため、一人あたり収入は低めとなっている。

政府はオーガニックの成長はこのあたりまでで、今後はこの20%という水準を維持するものと見ている。

オーガニック農業の成長にもかかわらず、オーガニックワインは出遅れていた。これはワイン流通業界のオーガニックワインに対する冷淡な態度が原因だったが、2005年以降に事情が一変した。現在オーストリアのオーガニックワイン生産者は5%だが、最近10年間で3000ha以上増加していて、6倍近い急成長した。


取材後にレッヒ氏と役所の近くにあるオーガニック食品店とスーパーマーケットBillaを訪問しました。
食品店のほうは期待していたよりも商品数が少なく、価格が高いのにびっくり。オーガニックチキンは1羽2,000円近くしていました。
パンやミルクなどはオーガニックと一般品の価格差が小さいですが、畜産品はかなり割高とのことです。
Billaはどこにもある普通のスーパーですが、たしかにあちこちにJa! Naturlichと掲げたオーガニック食品が目につき、浸透している様子がわかりました。


田村安の7月のオーガニックワイン講座案内

7月は京都、東京、福岡で開催します。


フランスオーガニックワイン講座&パーティ編@京都
7月4日(日):17:00-19:30

入門編@マヴィ赤坂本店
7月13日(火): 19:00〜20:30

入門編@マヴィ福岡店
7月30日(金):18:30〜20:00
7月31日(土):17:00〜18:30
アルザス編@マヴィ福岡店
7月30日(金):13:30〜14:30
7月31日(土):13:30〜14:30

by 田村安  at 09:49  | Permalink

フランスオーガニックワイン生産者訪問11

ボルドーからパリ・ドゴール空港までの国内線飛行機は、休息時間という感じで、ドゴール空港からはまたレンタカーを借り出してシャンパーニュの入口シャトーチエリー市まで運転です。
距離は短いものの夜間の高速道路1時間半は結構クタクタになり、高速出口の安宿ではバタンキュー、zzz

翌朝はマルヌ川に沿った国道でのんびりとエペルネに向かいます。丘沿いにブドウ畑が続く風景は雪に隠れて、なんとも寂しく、昨日までの南フランスとは大違いです。これがいかにもフランスワインの北限、シャンパーニュという風情。

エペルネの町では超大手の名門、モエ・シャンドン社を見学。立派な社屋に入ると、綺麗なお嬢さんが日本語の説明映画付きの工場見学コースを英語で案内してくれます。
シャンパーニュはパリから近いので、パリ駐在員時代にはよく日本からの訪問客を連れて、あちこちの有名メーカーを訪問していたこともあり、とても懐かしい。いかにもの高級ブランドの雰囲気がたっぷりと漂っています。今では決別した世界ですが、大手メーカーを見学すると、一般的な知識がよくわかりますので、誰かを案内するにはとても便利。零細な農家に行っても体系的な知識は説明されませんから。

大手の誇りは「毎年、寸分違わぬ、同じ香り、味のシャンパンを大量生産する」ということ。そのためにあちこちの生産者からブドウを買付けて、複数年をブレンドしています。まあ、香りは香料で整えれば、完全に同じ物ができますが、その説明はもちろんありません。そして世界中の劣悪な環境の流通にも耐えるため、しっかりと保存料が入ります。

お嬢さんに「モエ・シャンドン社の生産量は?」と質問したら、「シークレット」とのこと。「じゃあドンペリの生産量は?」って聞いてみたら、「それはトップシークレットよ」とウィンクされちゃいました。
最高のシャンパンを大量に作るのは本当は不可能。でも錬金術師はそれを可能にしちゃうのですから!

ドンペリニョン ドンペリニョン


午後にエペルネ近郊のオヴィレ村にマヴィの造り手、ヴァンサン・ブリヤールさんを訪問。こちらは対照的に超こじんまり。
モエ社では「かつて使われていた道具」コーナーに展示されている、木製のプレスがバリバリ現役で使われています。

木製プレス 木製プレスを説明するブリヤールさん

そして、「ブドウは毎年出来が違うんだから、毎年違うシャンパンに仕上がるのが当たり前」。

ブリヤール家の畑から見上げるドンペリニョンのいた修道院 ブリヤール家の畑から見上げるドンペリニョンのいた修道院


オヴィレ村の修道院はドンペリニョンがシャンパンを発明したところで、ブリヤール家の畑は修道院の南麓斜面で、元々修道院の畑。隣はモエ・シャンドンの所有畑で、つまり、ドンペリ畑の単一畑なのです。ブレンドなんかしなくても、極少量生産だし、本来のドンペリの味に仕上がるのは当然!

午前中のモエシャンが完全に霞む最高級シャンパン。なのに僕はドゴール空港まで運転しないといけない…
福岡店スタッフや新高円寺店の久保千尋さんがおいしそうに飲み干すのを恨めしげに見るのは、仕事とはいえ辛いところ(泣)

シャンパンのテースティング シャンパンをテースティングする新高円寺店の久保さん

そして高速道路をぶっ飛ばして無事ドゴール空港へ。
その夜発の成田行きで帰国の途に着いたのです。

かつて経験したことのない、猛烈なスピード*で巡ったフランス生産者訪問でしたが、福岡店は3月に開業し、新高円寺店は10月28日の開店の運びとなりました。

*10日間でモンペリエで開催されたオーガニックワイン生産者大会への参加と、生産者12軒を訪問


ノロノロと休みがちに書いてきた訪問記も、新高円寺開店に合わせて書き終えられ、ほっとしてます。
来年はマヴィのお客様向け訪問ツアーを、バスを仕立ててやりたいと思っています。
お楽しみに!

by 田村安  at 12:21  | Permalink  | Comments (0)  | Trackbacks (0)